家庭用チルド麺の売場に変化が起きている。市場では秋冬商品の導入期を迎えたが、近年恒例となった残暑の長期化に対応するためだ。上位メーカーは冷し中華などの涼味品を9~10月中旬まで販売するほか、気温の変化に左右されにくいつけ麺・まぜ麺の売り込みにも注力する。
インテージSCIデータをもとにした業界推計によると、家庭用チルド麺のうち4~7月の「冷し中華類」は約4%増(金額ベース、以下同)だった。4~5月は気温の上昇が緩やかで販売ペースも鈍かったが、猛暑が到来した6~7月は二ケタ前後の伸びでプラス転換した。
スーパーなどで涼味品の販売期間が本格的に延長されたのは昨年からだ。従来、秋冬商品に切り替える時期は8月末から9月中旬だったが、後ろにずらす小売業が増えており、今年は10月に実施するケースもあるという。
シマダヤは、「流水麺」ブランドの「冷し中華」2品について販売期間を9月11日頃まで延長する(昨年は8月末頃まで)。「そうめん」は11月中旬、「稲庭風細うどん」は11月末まで出荷。「『もみ打ち』生冷し中華 醤油味」は昨年同様、10月中旬まで販売。通年商材の「『流水麺』国産そば粉使用 そば」と「『同』国産小麦粉使用 うどん」は、10月上旬から新たに秋冬デザインのパッケージと“ホットめん”のメニュー提案を展開し盛り上げる。
日清食品チルドは、秋冬シーズンの主要テーマに“秋の残暑対策”を掲げて臨んでいる。気温変化の影響を受けにくい「つけ麺の達人」と「まぜ麺の達人」の両ブランドを前面に押し出す方針だ。今春に続き、9月に増量企画を展開し、麺2倍の「爆盛チャレンジ」を10~11月にかけて順次販売予定。
トップメーカーの東洋水産は、発売50周年を迎えた「マルちゃん焼そば 3人前」シリーズの活性化に注力。直近の9月は和風カップ麺「赤いきつねうどん」とのコラボ商品を限定発売。11月のバースデー月に向け、引き続き限定品やプロモーションで盛り上げる。
秋冬への切り替えに苦慮
一方、業界の共通認識として季節の変わり目は需要の予測が非常に難しい。特に冷し中華など涼味品は気温の上下だけでなく、雨や台風の影響で消費マインドが一変する可能性もあるからだ。難しい判断を迫られる中、メーカーは主に9月から秋冬向けのラーメンやうどんの新商品を販売開始する。
「工場では涼味品と秋冬商品の両方を生産する必要が出てくる。通常月に比べて生産アイテム数が約1・5倍に増え、現場の負担は大きい」(企画担当)という。
それでも近年の残暑を考慮すると対策は不可欠だ。取材では「涼味品の販売期間延長はまだ2年目。現状は過渡期とみている。来年以降に向けて、商品施策や営業施策の精度をさらに高めていきたい」との声も聞かれた。