苦戦の漬物業界、紅生姜が焼そば需要で“ひとり勝ち”

2025年の漬物市場では、紅生姜の存在感が一気に高まっている。浅漬やキムチなど定番が伸び悩むなか、紅生姜は前年比30〜40%増と大きく伸びた。背景には、米不足や物価高で家庭の食卓に「焼そば」が出る回数が増えたことがある。また、春先まで高値だったキャベツが4月以降値下がりし、家庭で焼そばを作りやすくなったことも追い風になった。スーパーではチルド麺と一緒に紅生姜を買い物カゴに入れる人も増え、この組み合わせが定番になりつつある。

紅生姜と焼そばの組み合わせは、戦後の屋台文化や関西の粉もん文化から広まったとされる。特に近畿や首都圏では定番の具材として親しまれており、こってりしたソースをさっぱりさせ、彩りや香りを引き立てる“仕上げ役”として欠かせない存在になっている。

チルド麺と漬物が隣接
 

麺類コーナーと並んで“ついで買い”

スーパーを中心に、ドラッグストアや都市型の小さなスーパーでも焼そば用の麺の近くに紅生姜が並ぶ光景が目立つ。必ずしも狙って配置しているわけではなく、売場の限られたスペースの都合という場合も多い。それでも消費者にとっては「麺を手に取ったついでに紅生姜も」という流れが自然に生まれ、需要を押し上げている。最近では棚に並ぶ紅生姜の数自体も増えており、以前より目に入りやすくなったことも後押ししている。ドラッグストアも、近年の食品強化で今では調理素材を一通り揃えられる場所に変わりつつあり、焼そばが食卓にのぼる回数を増やす一因になっている。

紅生姜の串カツが注目
 
万博で注目される酢漬の新しい魅力

一方で、紅生姜以外のガリや新生姜、らっきょうなどの酢漬は、コロナ禍で一度は需要が戻ったものの、その後はじわじわと減少している。紅生姜が酢漬全体の売上の約4割を占めているが、多くは業務用で、家庭で食べる機会は減っているのが現状だ。

今後のカギを握るのは、新しい食べ方の提案や観光とのつながりだろう。大阪・関西万博をきっかけに、大阪名物「紅生姜の串カツ」が注目されており、観光需要の広がりとともに酢漬全体の魅力が見直される可能性がある。暑い夏にぴったりの“さっぱり感”が再評価されれば、市場の再活性化につながるかもしれない。