J-オイルミルズは大阪大学大学院工学研究科の東森充教授と共同で開発したヒトの咀嚼過程を再現できる咀嚼シミュレーターに、液体を添加する新機能を搭載した。これまでヒトの感覚に頼っていた咀嚼中後期における経時的変化の可視化を実現。ヒトの咀嚼の再現性が向上したことにより、クッキーなど咀嚼に唾液を必要とする食品の「口どけ感」の見える化を可能にした。
食品のおいしさは味や香りだけでなく、歯ごたえ、弾力、舌触りなどの食感が大きく影響しており、食感を定量的に評価することは食品開発において重要とされている。従来行われてきた食品の硬さや弾力を測定する力学試験では咀嚼初期の物性しか計測できないため、ヒトの咀嚼過程で変化する様々な食感が評価できない課題があった。
J-オイルミルズと大阪大学大学院工学研究科は、食品の評価に重要な咀嚼の全工程（食べ物を歯で噛む、すりつぶす、舌と唾液で混ぜ合わせる、整えてまとめる）を評価するため、18年から共同研究を開始。従来の装置では難しかった咀嚼の最終工程である「整えてまとめる」機能を持った咀嚼シミュレーターを開発し、今回新たに唾液を再現する液体を加える機能を追加した。
これにより、クッキーのような低水分の食品が口の中で溶けていく変化をヒトの口腔内に近い条件で再現し、一般的な装置では評価が難しい咀嚼中後期の「口どけ感」について力学データと画像データの両面で評価できるようになった。
J-オイルミルズは「おいしさデザイン」を掲げ、油脂製品やテクスチャー素材（でんぷんなど）を展開している。咀嚼シミュレーターを活用し、「製品の販売拡大やテクスチャー素材の開発につなげるほか、各業界との連携を進め食品評価の質向上に貢献していきたい」とコメント。
大阪大学大学院工学研究科の東森教授は「今回開発した咀嚼シミュレーターがおいしい食品、安全な食品の開発の一助となるとともに、食品科学と機械工学の融合分野の発展につながれば幸いです」と期待を寄せた。
なお、「FOOMA JAPAN2025」日本食品工学会フォーラム2025で「咀嚼シミュレーターによる食品経時変化の可視化」について講演、8月開催の「日本食品工学会第26回年次大会」でも発表を予定している。
