小・中学校を表彰する「環境美化教育優良校等表彰事業」(主催:公益社団法人食品容器環境美化協会、略称・食環協)。25回の節目を迎えた今年度、最優秀校に選出された学校紹介特集の最終回は、特別賞 協会会長賞を受賞した和歌山県田辺市立本宮中学校だ。「第25回環境美化教育優良校等表彰式」は1月31日、浅草ビューホテル(東京都台東区)で開催された。
世界遺産学習でおもてなし精神発揮
日本古来の祈りの文化が息づく熊野本宮。緑濃い山々の間には幾筋もの川が流れており、たびたび氾濫を繰り返してきた。2011年に発生した紀伊半島大水害では町が甚大な被害を受けた。元気がなくなった地域を少しでも明るくしたいと立ち上がったのが同校の中学生たちだ。当時の生徒は、季節の花を植えたプランターを町の目抜き通りや施設などの目立つところに設置。住民の家にも配り続ける生徒の姿は地域の励みとなり徐々に明るさを取り戻した。
住民の羽根千惠子さんは「水害の時に、中学生が花のプランターをたくさん置いてくれたんです。『頑張ってください』というその一言がすごく励みになりました」と振り返る。
それから10年以上が経過し「復興」を果たした現在は、国内外から訪れる観光客に向けた「おもてなし」の活動へと深化。道端のポイ捨てごみを回収しながらたくさんのプランターの花でおもてなしする精神は、世界遺産を2つ抱える環境を生かした世界遺産学習でも発揮される。
世界遺産の一つ、「熊野古道」では、損傷が著しい個所を修復する「道普請(みちぶしん)」を実施。階段状に木枠を設けたり、土を補充したりと慣れない大変な作業だが、住民の協力を得て生徒は観光客に安全に歩いてもらおうと、裏方として支えている。
同時に、自分たちの町の魅力をアピールするために地域の顔として「語り部」にも挑戦。増えている海外観光客とは英語で交流しながら、語り部学習で学んだことを広く発信している。
真砂(まなご)ひめのさん(中1)は、「海外から来た観光客の方々にインタビューをして心に残っていることは、自分たちの住む地域を褒めてもらい、それがとてもうれしかったことです。慣れない英語の会話で苦労もしましたが、観光地だからこそできることなので良かったと思います」と手ごたえを実感する。
かつて被災した町を花で元気づけた生徒の思いを受け継ぎながら、ふるさとへの誇りを胸に刻んでいる。