天ぷらや米菓など、揚げ物調理で発生する揚げカス。環境関連企業のエコリオ(本社・東京大手町、浦野由紀夫代表取締役)が開発した揚げカス搾り機「エコリオ」は天ぷらなどの揚げカスをプレスすることで、油と搾りカスに分離。搾り油はフライ油やバイオマス燃料に、揚げカスは飼料に活用することで、ゼロエミッション化に貢献するだけでなく、カーボンニュートラル実現に向けた再生エネルギーの原料としても注目されている。
外食店や惣菜店、冷凍食品や米菓工場など、フライ品の調理工程で発生する揚げカスは産業廃棄物として処理されている。揚げカスは未処理のまま置いておくと酸化熱によって自然発火する可能性があり、飲食店や食品工場では水や廃油と混ぜて、専門業者に有償で引き取ってもらうケースも多いという。
揚げカス搾り機「エコリオ」は、これまで産業廃棄物として捨てるしかなかった揚げカスを、食品残渣リサイクル法の法定基準(ゴミの総排出量20%削減)を達成することを目的に開発された。エコリオで処理した揚げカスは消防法の非危険物として認定を取得している。
エコリオは揚げカスの処理に悩んでいた外食店や惣菜ベンダーを中心に導入が進んでおり、最近では冷凍食品、米菓などの量産工場での採用も増えているという。揚げカスに含まれる油と、搾りカスに圧縮分離し、ごみ容積を減らすだけでなく、揚げカスを資源として活用することで導入企業のゼロエミッション化に貢献する。
近年では、カーボンニュートラル実現に向けて、揚げカスを活用した資源循環の取り組みが注目を集めている。
22年夏に埼玉県熊谷市に竣工した「エコリオステーション」では、「エコリオ」で処理された揚げカス由来の搾りカスを回収し、飼料やバイオコークス、液体バイオマス燃料などに加工。持続可能な航空燃料(SAF)の原料油脂としても期待されており、各業界から熱い視線が寄せられている。
浦野代表取締役は「これまで廃棄されていた揚げカスを資源として、カーボンニュートラル実現に貢献していきたい」と意気込みを語る。そのためには、冷凍食品や惣菜、米菓など揚げ物を大量生産する工場や飲食店への「エコリオ」導入を進めるとともに、発生した搾りカスを回収する仕組みを構築し、「サステナブルな資源循環の取り組みを広げていきたい」と語る。
エコリオの顧問を務める羽田誠一氏(元マルハニチロ専務)は自らの経験もふまえ、「日々の製造工程で発生する揚げカスの処理に悩んでいる企業は多い。産業廃棄物として処理している揚げカスが資源に生まれ変わり、CO2排出削減にも貢献できる。まずは、食品業界にエコリオの取り組みを広く知っていただくことが第一歩」と強調する。