「見たいものしか見ない」世界で

英ガーディアン紙がXへの投稿停止を発表した。旧ツイッターからの改名に至るここ数年の経緯を考えれば、そんな動きが出てくるのも自然の成り行きに思える。

▼陰謀論や差別的投稿を「表現の自由」の名のもとに放置する一方、自身に批判的なアカウントは停止する。オーナーであるイーロン・マスク氏による恣意的運用が目に余る。「見たいものしか見ない」メンタリティが加速するSNS全盛の世界で、マスク氏の盟友トランプ氏が米大統領に返り咲くことも必然なのかもしれない。

▼死者も出た議会襲撃を扇動し、事実に反する情報を公然と語る。先日は福島第1原発事故に触れ「3000年はその土地に入ることはできない」と発言した。そんな人物が「自分たちの生活を良くしてくれそうだ」との一点に賭ける人々から熱烈に支持された。

▼独善的な立場を崩さず、ウクライナ侵略にまい進するロシアのプーチン大統領。子どもを含む民間人の犠牲も意に介さず、ガザ地区での破壊と殺戮を続けるイスラエルのネタニヤフ首相。彼らを支持する民衆は、見たくない現実に目を向けるべきだ。