手延そうめん「揖保乃糸」の商標をもつ兵庫県手延素麺協同組合は、来年3月8日をめどに、小売価格を5%引き上げる方針を発表した。主力商品「上級品300g」の希望小売価格を462円に、「特級品300g」を803円に改定する。その他そうめんやひやむぎ等の製品にも反映する。
猛暑の影響もあり今年の夏の「揖保乃糸」の販売量は伸びたが、需給に対して供給が追い付かず、生産の維持拡大のための投資を促し、生産力強化を図る。また令和6年10月期の輸入小麦の政府売渡価格は、5銘柄平均で4月期から1.8%引き下げられるが、「揖保乃糸」原料の中核を占める豪州産中力粉(ASW)は逆に上がる見込みだ。原料の高騰や資材、エネルギーコスト、人件費等の負担も増え、価格に転嫁する。
手延そうめん業界では近年、高齢化や後継者不足が加速化して全国的に生産者の廃業が相次いでいる。揖保乃糸でも生産組合員は385軒となり、10年前と比べて15%減少した。年間5000ケース(1箱18㎏換算)以上を生産する組合員は全体の10%未満となり、将来的にその数を倍増させることで、生産者が減っても安定供給できる体制を築く考えだ。
井上猛理事長は、「組合員の加工賃を引き上げることで設備投資を促し、後継者を育て、パート作業員を確保してもらう」と話す。
他産地でも機運高まる
乾麺業界の価格指標である「上級品300g」の改定により、手延べ麺、機械麺全体で値上げ機運が高まりそうだ。半田そうめんでは大手2社が既に値上げを公言しているほか、岡山手延素麺でも生産者の賃金アップを理由に4年連続の価格改定を見込む。小豆島手延素麺協同組合はこれから検討に入る予定で、「揖保乃糸と同程度の値上げ率になるのではないか」(伊藤雄二理事長)。