関東大震災で地方への菓子供給が全面ストップしたことを受けて「地方にも菓子の量産工場を」との決意のもと、大震災から約1年後の1924年11月、新潟県柏崎(市制施行は1940年)で創業したブルボン(当時・北日本製菓)。地震など自然災害への危機意識を常に持ちつつ自然との調和を重視して千年の大計を描く。
世界的に深刻化する気候変動問題を踏まえた動きとしては、脱炭素社会の実現に向け活動。新潟・山形の5工場(オンサイト)と2か所のオフサイトで太陽光発電を実施しているほか、トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトの推進などに取り組んでいる。
その中で比較的新しい取り組みが、2022年11月に竣工した魚沼工場(新潟県魚沼市)にある豪雪地帯の立地を生かした雪室の原料保管倉庫の活用となる。
ここでは、地域資源である雪の冷気を利用し、原料のカカオ豆やコーヒー豆を貯蔵している。
吉田康社長は「意外にも雪室工場が作れるだけの豪雪地帯はありそうでない。魚沼市は2m以上の積雪地帯で、除雪した雪を室の中に入れておくだけで温度を下げるエネルギーになる」と説明する。
雪室には味わいをまろやかにする効果があり、空調・冷却エネルギーに留まらず加工に要するエネルギーも削減する。
「チョコレートの製造工程には、カカオ豆の粒度を舌で感じられなくなるくらい微細にすりつぶし、えぐみを取り除いてまろやかにしていく精練工程がある。その工程にエネルギーを使用すると脱炭素に逆行するが、雪室であれば、えぐみを取る工程を少なくする。極端な場合、すりつぶすだけで済む」と語る。
雪室に貯蔵された原料はすでに製品に使用されている。
23年11月には「魚沼雪室熟成カカオ豆使用」を謳った「雪室ショコラ」2品を新発売。
「もう少し自然をうまく活用したような物づくり、菓子だけでなく多くの食品を考えていきたい。雪室の活用はその端緒。雪は厄介なものという意識が強いが、利用することを真剣に考えないといけない。昔から雪の中に野菜を入れるといった知恵はあったが、産業にはしていなかった。今後も再生エネルギー活用例を掘り起こしながら、今後はコーヒーやお茶などにも積極的に展開していきたい」と意欲をのぞかせる。