希薄化する気配り

東海道新幹線の喫煙ルームが廃止され半年が経過した。多くの愛煙家にとって苦々しい処置だったろうが、個人的にはホッとしている。

▼危うく禁煙しそうだった。近頃は街中で散見する光景だが、件の喫煙スペースでも神経を疑う行動が常態化していた。チコちゃん風に嘆くなら「同好の士が並んで待っているのに、煙を楽しむよりもスマホいじりに夢中になる輩のなんと多いことか」。

▼嘆かわしすぎて、かつて一世を風靡した名アナウンサー・鈴木健二さんの「気くばりのすすめ」を想起した。バブル景気が始まった年のベストセラー本だ。あのヒットは、気配りが徐々に希薄化していく変化に対する社会の危機感だったのかもしれない。

▼無意識な言動がハラスメントと指摘されうる現在、他者と必要以上にかかわらないことが最良の自衛策となる。食品も個食タイプが増えた。社会変化に対応して増えたのはもちろんだが、個食対応品の開発が活発になった結果、一人で食事する人がさらに増えたのかも。寂しがりな中年男としては大人数で食卓を囲めるメニューも充実してほしいと願うこの頃だ。