イオン 防災食・用品を拡充 「帰省前需要」照準に2割増計画 アウトドアとの併設販売も実施

イオンリテールは8月から9月末まで本州・四国のイオン、イオンスタイル約300店舗で防災食を含めた防災関連商品の品揃えを増やして販売し、従来に比べて催事期間も延長する。帰省時に実家を含めた家族全体の安全をもう一度見直してもらうため、帰省前の需要を取り込む。同社が防災関連商品の強化策を打ち出すのは今回が初めて。

品目増やし、9月末まで期間延長

従来は防災需要が高まる3月11日(東日本大震災発生日)と9月11日(防災の日)前後の数週間を催事期間とし、防災需要に応えてきた。しかし近年では年間を通して災害が多発しているほか、「特に8~9月はゲリラ豪雨、台風など災害発生率が増える傾向にあり、防災意識も高まると判断」(イオンリテール住居余暇本部ホームファッション食品部の今田哲弘氏)。8月から品揃え強化と売場規模の拡大を決めた。

「今年は1月の能登半島地震以来、防災用品および防災意識が高まり、今でも売上が伸長している」と今田氏。能登半島地震の発生で大規模な停電や断水が起こり、年末年始の休暇の帰省中に多くの人が被災し、各家庭で備蓄する防災食や非常用トイレが不足する事態を招いた。そこで今年から帰省する前に災害に備えてもらうため強化策を打ち出す。

「今年も3月11日に向けて催事展開を始めたが、トピックスとしてはゴールデンウイーク前から防災用品の売れ行きが高まったこと。能登半島地震を契機に実家の家族を含め、家の安全を見直す機運が高まった」と言う。そこで今年も9月1日に向けて催事を展開するが、「従来はお盆後から9月初めにかけて催事を行ったが、今年はお盆前から前倒しで実施。規模も広げ、昨年より長い9月末まで行う」。

イオンでは今年、防災用品の需要が大きく伸長し、特にゴールデンウイーク前の4月には防災用品の売上が前年比2・5倍になるなど、連休前に買い求める生活者が増えたと言う。能登半島地震が発生した1月は防災意識が急速に高まり、イオンの売上も前年の5倍に達したが、ゴールデンウイーク前も2.5倍、催事を展開しなかった7月も4割増と高水準で推移。今年は昨年の1.5倍にあたる86品目の防災用品を用意し、売上規模も全国で前年同期比120%を見込んでいる。

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例年は耐震ポールや水害対策用の給水シートは展開しなかったが、今年は多角的に様々な災害に対応できるよう品揃えを増やす。地震に備え耐震ポールや防災用窓ガラスフィルムも導入するほか、防災食や非常用トイレの大容量パック商品も新たに揃える。最近では防災バッグ(防災セット)や非常用トイレセットが売れ筋と言う。

「昨今、防災用品はフェーズフリー“備えない防災”という考え方が浸透してきた」と今田氏。これは災害時に準備するのではなく、日常的に使用しているものを災害時に役立てるという考え方だ。地震時に足を守るスリッパや、行楽用にも使える保存用パックごはん、ランタンなどがフェーズフリー商品にあたる。

また今年からアウトドアでも使える防災用品との併設販売を実施。近年人気のランタンタイプの灯具を導入するほか、5年間の長期保存が可能なパックごはんを新たに導入し、アウトドア用品売場と併設する。催事開催中にはお湯や水だけでできるアルファ米の試食コーナーを設け、賞味期限が長いアルファ米でもおいしいことをアピールする。