イオングループのイオンネクストが運営するネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」は、利便性の高い配送サービスによって1%未満の不在率を達成し、会員数が拡大している。
7月3日、「Green Beans」2024年度戦略説明会に登壇したイオンネクスト副社長兼イオンネクストデリバリー社長の野澤知広氏は「タイパを重視するお客様から特に支持され、昨年7月10日のオープンから1年で会員数が21万人を突破した」と振り返る。
「グリーンビーンズ」のポイントの1つに、1時間単位での配送指定が挙げられる。これにより“待つストレス”を解消し、その結果、不在率を低減。
「7時から23時まで、1時間単位で配送をご指定いただける。アプリで“トラックが到着しました”といった配達状況のメッセージがくるため、お客様からは“待つストレスから解放される”“時間が有効に使えて予定が立てやすくなった”とのお声をいただいている。1時間単位での指定だからこそお客様の不在が少なく、我々にとっても不在率が低減され、お互いにとってWin-Winな効果を生んでいる」と説明する。
通勤前の朝の時間帯が人気であることを受け、現在は一部の地域で朝6時からの配送も試験的に行っている。
現在は対面・非対面での配達を行っているが、今後は置き配も検討する。
商品面では、“1週間鮮度保証”を謳う「鮮度+」ブランドがポイント。同ブランドが、鮮度感を前面に押し出したサイトのイメージ醸成に寄与している。
ネットスーパーの商品の鮮度への不安を解消すべく、プロが目利きをした商品を、一定の温度で短時間で届けるというサプライチェーンの強みを活かす。
「ネット“なのに”新鮮なものが届く、ではなくネット“だから”新鮮なものが届きます、というメッセージとともに発売させていただいたブランド。現在は15品目で、累計販売件数は25万点と非常に人気となった」と胸を張るのは、イオンネクストの取締役副社長である太田正道氏。
「『グリーンビーンズ』は鮮度の良い商品を扱っているという認知を牽引するブランドになった。この夏、農産物以外に畜産の冷蔵商品も展開し今年度は30品目にまで拡大する」と意欲をのぞかせる。
このような好評を受け、7月3日からは第2弾となる果物などの新ブランド「食べごろ+」を展開している。
コールドチェーンで温度を管理し、科学的に追熟度合いを予測する特殊センサーも活用することで、届いたときから食べごろになるように商品を配送する。
「実際に手に取っても見分けるのが難しいフルーツなどの食べごろを、我々が科学的なアプローチも取り入れながらご提案していく」という。
最初はキウイ5品目、メロン2品目、アボガド1品目の8品目を取り揃え、今後も季節に応じた商品を提供していく。
現在、売上全体の15-20%の構成比を占める好調な冷凍食品にも注力する。
「鮮度というと冷蔵のイメージがあるが、冷凍にも鮮度がある。例えば冷凍水産品の例では、特殊凍結技術を活用し、細胞壁の破壊を抑え凍結時の鮮度を高いレベルで再現できる。冷凍の総菜でも、冷凍だからこそできたてに近い味を閉じ込められる」と自信をみせる。
「グリーンビーンズ」のオープンから2年目に入る今年は、認知を拡大する成長フェーズにあり今後はさらにネットスーパーのニーズが高まると捉えている。
野澤氏は「日本の食のEC化率は4.2%だが、欧米や中国では既に10%を超えており、日本もそのようになっていくと考えている。例えば東京都の共働き世帯率は、足元では67%まで拡大しており、子育て世代の30代では7割を超えている。共働き世帯が増えるほど、平日に買い物に行く時間が取れないという方が増え、ネットスーパーの需要が伸びていく」との見方を示す。
ネットスーパーの需要に対応すべく、スポーク(商品を供給する大型倉庫から大型車両で運んだ商品を、配送用車両に分けて積載する拠点)を増やしていく。
2024年は5月に西日暮里スポークを開設し、8月には板橋に開設することで板橋区・豊島区・練馬区へのサービスを開始する。
今秋には、豊洲・葛西・市川の3拠点にスポークを開設し、配送効率を高めるとともにサービスのエリアを拡大する。
商品の供給拠点である大型倉庫CFC(顧客フルフィルメントセンター)は、現在は誉田CFC一箇所のみとなっており、今後、拡充していく。
26年には新たに八王子CFCが稼働見込み。
27年には、埼玉県に久木宮代CFCの稼働を目指し、計3個所からの商品供給を予定する。
久木宮代CFCは誉田CFCの1.5倍の広さとなり、供給力は最大で誉田CFCの2倍となる。これは通常のスーパーの80-100店分の供給力となる。
今後は、“ECだからこその強み”でニーズを獲得して差別化を図る。
「これまでのネットスーパーは、店と同じものが届くため、配送という点の便利さのニーズだけだった。ネットだからこそできることは多くあると考えており、そのニーズをしっかりと捉えていく」と野澤氏は力を込める。