飴、芋、茄子、オートミール…これが何を示すか、お分かりだろうか。「近代日本経済の父」と称された渋沢栄一の好物だ。今月3日に新紙幣が発行された。一万円札に渋沢栄一、五千円札に津田梅子、千円札に北里柴三郎の肖像がデザインされている。
▼生前の聞き書きによると渋沢は酒をあまり飲まなかった。甘いものは好きでよく食べ、中でも飴を好んだ。食事の際には芋と茄子を好んで食べた。大好物はオートミールで、牛乳と砂糖をたっぷりかけたオートミールを毎朝食べた。
▼オートミールはオーツ麦(えん麦)を食べやすく加工したシリアル。渋沢は江戸末期に徳川慶喜の弟、昭武のパリ博覧会に随行した際、初めて口にした。それ以来「あれを食べないと食事をしたような気がしない」というほど好きになった。
▼オートミールには食物繊維が多く含まれており、健康食として近年も注目されている。現在は便利なカップタイプの即席商品もある。経済の父は食の面でも時代を先取りしていたわけだ。渋沢翁の愛したオートミールを噛み締めて景気回復を祈るか。