ふりかけの老舗メーカー、田中食品(広島市)。海外でふりかけの市場が拡大しているのを受け、昨年、添加物不使用の「世界の友」を発売した。特許を持つ「巻くふりかけ」の可能性も探る。「世の中に必要とされるものを出し続ける」と語る田中孝幸社長に話を聞いた。
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――昨年、看板商品「旅行の友」をベースに海外市場を見据えた「世界の友」を発売しました。さらに今回、新製品が加わりシリーズ化されました。どのように展開する考えですか。
田中 アジア圏を中心に海外のふりかけ市場は広がっている。海外を意識し、添加物不使用のふりかけ「世界の友」を発売した。同じコンセプトでフレーバー展開したのが、今回発売した「自然のうまみ仕立てシリーズ」の3品(鰹、たまご、海苔)だ。「健康」というテーマは世界共通。世界中で販売し世界の健康に貢献するため、大多数の国を網羅できる仕様になっている。
――プレミアムタイプとソフトタイプにも新商品が加わりました。
田中 プレミアムは「鰹ふりかけ」「山葵ふりかけ」の2品を発売した。「プチ贅沢」に関する調査によると、約7割の人が食べ物にお金をかけるという結果が出ている。今回はご当地料理に注目し、その味を再現したふりかけを開発した。焼津産のかつお節、高知産のゆずなどの国産原料を使っている。特に「山葵」は、わさび好きな人でも十分に満足できるほど強めの風味に仕上げた。
ソフトふりかけは好調に推移している。今回は生鮮魚介類の中で購買が最も多い鮭に着目し、「焼鮭」を投入した。
――ソフトタイプが好調な理由をどう見ていますか。
田中 素材を感じやすく、軟らかいため高齢の方も安心して食べられるからだと思われる。リピートにもつながっている。
また、素材型の商品が中心なので、ご飯だけでなくパスタやおかずにも利用できる汎用性がある。海外では、ふりかけが素材型の調味料として使われることも多い。ふりかけはご飯にという固定観念は強いが、こうした商品によりそれを変えていきたい。
――固定観念を変えるということでは、シート状の「巻くふりかけ」があります。
田中 現在、広島県宮島口にある直営店「旅行の友本舗」と通販で扱っている。海苔のようにご飯に巻いたり、好きな形に切ってトッピングにしたりと使い方はさまざま。
特許を取得した独自の製法で作るので、既存のものにはない食感がある。ふりかけにとどまらず、シート状の食品として飲食店などの業務用に広げたい。
――このほど、「ガラスびんアワード」で「タナカのプレミアムギフトセット」が優秀賞を獲得しました。どういった商品ですか。
田中 広島には世界各国から多くの人が訪れる。今までにないお土産用のふりかけで、世界に向け平和を発信しようと考案した。昨年、広島でG7サミットが開かれるのに合わせて商品化した。
一見すると陶器のようだが、実際は砡ガラスを使った白いびんだ。見た目と違い手に持つと意外に軽い。ラベルをはがすと厳島神社や牡蠣が現れる。こうした点が評価されたと考えている。
――今後、取り組むべき課題を教えてください。
田中 「旅行の友」の次の柱になる商品を作る。ロングセラーに頼るばかりではなく、もっと世の中の役に立てるよう新しい商品を開発する。一番のテーマは健康だ。これだけを食べておけば大丈夫というくらいの、健康的な商品を作り世界の健康に貢献したい。
国内の人口は減るが、販売ルートを広げればまだまだ伸びる要素はある。今まで通りに残すべき部分は残し、そうではない部分の変化を捉えれば可能性は広がる。