野菜飲料の戦略転換が求められている。一時期の低迷期を脱し再浮上の兆しを掴みつつあったが、その前には価格改定が重くのしかかり浮上のチャンスを拒んでいる。コロナ禍では免疫ケア飲料の中心部に位置していたが、市場環境が変化し乳酸菌飲料など従来とは異なるカテゴリー間競争も始まり、今期は新たな対策が求められている。
昨年の野菜飲料は全般的に厳しい状況だったが、今後の成長を示唆する新たな展開も芽生えてきた。昨年は野菜飲料の中でトマトジュースの躍進だけは唯一明るい話題だった。トマトの持つリコピンの機能性が再評価され、機能性表示に関心の高い40~60代の購入量が増加。SNSでは10~30代女性にリコピン=美容という新たな話題が広まり、同世代の購入率も増加した。今年は各社が機能性を照準にしたマーケティング戦略を強化する方針で、新たな機能性研究も進められている。
昨年はチャネル展開でもECや宅配による伸びが目立ち、今期への期待感が高まっている。昨年の野菜飲料のチャネル別売上高(前年比)は、コンビニは上期101%、下期102%、累計101%。量販店は上期96%、下期99%、累計97%。ECは上期107%、下期112%、累計109%となっており、母体は小さいもののECの伸びだけが目立った。高齢者ユーザーが多い野菜飲料だけに、高齢者が愛用しているECの定期購入が下支えしており、今年のチャネル戦略ではEC強化も選択肢の一つになっている。
カゴメが打ち出した「にんじんヒーロー化戦略」は、野菜飲料活性化に向けた新たな起爆剤になりそうだ。「トマトのリコピンは定着しているが、にんじんの栄養素であるβ-カロテンの認知および摂取意向は下がっている。一方でβ-カロテンの価値を上げる兆しは出始めている」と同社。
今年はにんじんのβ-カロテンに注力し、リコピンにならったヒーロー化を目指す。β-カロテンの健康、美容価値およびにんじんならではのおいしさや原料価値を発信。朝に着目したコミュニケーションや店頭活動などを通じて健康・美容価値を啓発する。製品では「にんじんジュース プレミアム」「にんじんジュース 高β-カロテン」などを発売した。伊藤園やキッコーマン食品も野菜飲料の中ににんじんを使用しているが、戦略として掲げるのはカゴメが初めてであり、市場活性化の点でも意義深い。