小林製薬が機能性表示食品として販売していた紅麹サプリを摂取した人の間で、腎疾患などの健康被害の報告が増え続けている。3月29日現在、死者は5人を数え、114人の入院者が判明。連日の報道では事業者責任で科学的根拠に基づいた機能性を食品に表示し販売できるという制度の特徴を問題視した取り上げ方も目立つ。該当製品に対する安全性への疑問のみならず、機能性表示食品制度への信頼が大きく揺らいでいる。
消費者庁は3月28日付で機能性表示食品約6千800品を届出する約1千700の事業者に質問状を送り、4月12日までに緊急点検を求めた。また同庁は小林製薬が「紅麹コレステヘルプ」をはじめとした9件の機能性表示食品の届出を撤回したと発表。厚生労働省では小林製薬が紅麹原料を卸した商社やメーカーら52社と、供給先の食品企業173社を公表した。小林製薬ではNB3製品の回収を呼び掛けているが、紅麹を使った商品を製造販売する企業でも製品の自主回収が相次いでおり、問題が深刻になるにつれ費用も膨らみ続けている。
健康食品産業協議会の橋本正史会長は本紙の取材に応じ、業界団体の立場で機能性表示食品やサプリの安全性について行政から検証の協力要請があれば応じる考えを明らかにした。
同協議会では3月25日付で、正会員と賛助会員に向け注意喚起の文書を送付。橋本会長は本紙に対し「業界団体としてこの問題を真摯に受け止めている。機能性表示食品は安全性、機能性、品質の3つが重要なポイント。特に安全性は十分に担保されなければならない。行政から協議会に安全性の再検証の要請があれば全面協力する。今回の問題でサプリ離れが進むことは覚悟しているが、消費者の不安を払拭するために協議会では他団体や行政らと連携していく」と見解を述べた。
小林製薬は3月29日に開いた会見で、紅麹に混入したとみられる未知の成分について一旦は「構造はみえてきている」としながらも明言を避けたが、会見中に厚労省が、小林製薬から未知の成分は青カビから生成すると考えられるプベルル酸の可能性があるとの報告を受けたと発表。小林製薬も同成分の存在を認め、原料段階での混入が濃厚だとした。今後、厚労省はプベルル酸と健康被害の関連について調査に乗り出す。問題の原因究明には一定の時間を要しそうだ。