家庭用チルド麺市場では、春季の需要開拓を狙った大型商品や新規のプロモーションが積極的に投入されている。狙いは冷し中華が主役となる盛夏前の端境期を活性化することだ。夏物の早仕掛けに加え、焼そば、パスタなどのラインアップを拡充する動きが目立つ。視線の先には「秋需に残暑と暖冬でも売れる品揃えに進化させたい」(メーカー企画)との思惑もある。
チルド麺の春夏シーズンは、冷し中華を中心に7月にピークを迎える。その前の需要を盛り上げるべく、上位各社はこれまでつけ麺、まぜ麺、ざるラーメンなどを拡充してきたが、24年は既存品の新施策と大型商品の投入で例年以上の盛り上がりが期待されている。
シマダヤは“さっと水でほぐすだけ”の「流水麺」ブランドで例年より時期を早めて3月にテレビCMを放映。佐々木希さんを起用したことでも注目を集めた。背景には「流水麺」を年間商材に育成したいとの狙いがある。昨年秋冬は、春夏からの継続販売を積極的に推奨したことが奏功し好調な売れ行きとなった。その余勢を駆って今春のシーズンインをさらに盛り上げたい考えだ。
「鉄板麺」は新商品で「和風だし醤油味」と「旨辛コチュジャン味」を2品同時発売。シリーズ全体で麺をさらにほぐれやすくした。2月下旬からテレビCMを放映。
日清食品チルドは、新商品「チルド 日清焼そばU.F.O.」が話題の的。カップ焼そばNo.1ブランド「日清焼そばU.F.O.」の味わいをチルド焼そばにアレンジした。キッチンカーや試食販売も展開し“食欲を刺激するソースの香り”を振りまき売場を盛り上げる。昨春発売のヒット商品「日清Spa王」喫茶店シリーズには「マイルドカレースパ」を追加。子どもから大人まで楽しめる味わいに仕上げた。簡便な「日清のそのまんま麺」シリーズにも注力。新たな切り口のプロモーションなどで活性化を図る。
東洋水産は、主力品の骨太化を目指しながら新シリーズも育成。「マルちゃん焼そば 3人前」シリーズの新企画として、旬の野菜を楽しむ「春限定」の2品を同時発売した。夏場以降に向けても活性化策を検討中。「つるやか」は麺質をブラッシュアップするとともに、電気もガスも使わない“省エネ麺”として訴求を強化する。また新たに「懐かしスパ」シリーズを立ち上げ、「ナポリタン」「醤油バター味」を発売。フライパン一つの簡単調理でまた食べたくなる懐かしい味わいが楽しめる。
一方、春季のマーケットを活性化することで、秋需の残暑・暖冬対策につなげたいとの声も聞かれた。「焼そば、パスタ、つけ麺などで端境期の需要を深掘りできれば市場にとって新たなチャンスになる。地球温暖化で残暑や暖冬が恒例化しつつあり、秋需の品揃えも深化させていきたい」(メーカー各社)との意気込みだ。