漂着ごみの楽器で資源の大切さ発信 海岸清掃を契機に啓発に努める

地域の環境美化に取り組む小・中学校を表彰する「環境美化教育優良校等表彰事業」(主催:公益社団法人食品容器環境美化協会、略称・食環協)。24回目となる今年度、最優秀校に選出された学校紹介特集の最終回は、協会会長賞を受賞した徳島県松茂町立長原小学校だ。表彰式は1月26日、浅草ビューホテル(東京都台東区)で開催された。

〈協会会長賞〉徳島県松茂町立長原小学校

紀伊水道が目の前に広がる豊かな環境を舞台に、多彩な活動を行っている。40年以上にわたり続くのが、漁協や自治体と連携しながら取り組む長原漁港の清掃活動だ。同様に同校の近くにある海岸でも、地元企業などと協力して清掃を実施してきたが、過疎化に伴い数年前から学校単独活動になった。それを契機に、地域の環境問題を改めて自分事として考える取り組みに深化させている。

まず児童は、繰り返し使えるごみ箱を手づくりし、清掃時に持参。朝の時間を清掃にあて、自主的に海岸に向かうようになり、その回数が徐々に増えていった。回収したごみは、重さを量って記録しながら分別作業を実施。岩井凌央(りょう)さん(小4)は、「海岸は、ペットボトルやプラスチックごみが目立ちます。夏場は特にごみの量や種類が増えて大変です」と苦労を語る。

そうした体験を経て、ごみ回収にどれだけ熱心に取り組んでも、ごみがなくならない現状を目の当たりにした児童は、広く発信したいという思いが向上。ちょうど「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」を見学し、徹底したごみ分別に刺激を受けた時期とも重なり、回収した漂着ごみをそのまま生かしてアピールしようと、「ごみアート」を開始した。

作品は実際に松茂町のイベントで展示紹介。反響を呼んで手応えを感じた児童は外部講師の協力の下、ごみアートにメッセージ性を加えた「ごみで楽器製作」にも挑戦した。

大勢の観客の前で活動成果を発表する児童たち - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
大勢の観客の前で活動成果を発表する児童たち

大学生とともに児童の指導を行った四国大学経営情報学部経営情報学科の鈴鹿(すずか)剛(たけし)准教授は、「漂着ごみで楽器を製作しながら自分たちの思いを形にできたのは、大きな自信につながったと思います」と振り返る。

ごみから奏でられる音色に感動した児童は、「とくしま環境学習フォーラム」で活動成果を発表した。同校の児童数は現在7人。数年後には廃校の可能性もあるが、海岸清掃を通じて成長した7人の活動は、地域内外に大きなインパクトを与えている。