サントリー食品インターナショナルは、世界で注目されつつある「ウォーター・ポジティブ」という概念を前面に押し出して水のサステナビリティ活動を強化していく。
世界的な水不足が様々な問題と絡み合い社会課題になっていることが背景。
12月12日、発表会に臨んだ小野真紀子社長は「2050年には世界中で50億人以上が水不足の状態に陥ると言われている。水そのものの不足も大きな問題だが、農作物の収穫不足や生物多様性の喪失にもつながっており人類が直面する大きな社会課題となっている」と語る。
昨今、このような状況を踏まえて用いられるようになったのが「ウォーター・ポジティブ」という概念。
水の使用量を減らすだけではなく、取水量以上の水を水系に積極的に育んでいく考え方で、海外では注目されつつあるという。
欧米などの海外ではエシカル消費が進み、国内においてもサステナビリティ活動を積極的に行っている企業や環境に配慮した製品の購入意向が今後高まっていくことが予想されることから「水をはじめとするサステナビリティ活動は事業継続のためだけではなく事業成長のためにも必要不可欠な活動と考えている」。
国内と海外それぞれで方針を定めて活動していく。
国内では、飲料市場トップブランドの「サントリー天然水」を通じて「ウォーター・ポジティブ」の大切さを啓発する活動を一層強化していく。
サントリーグループでは、全国の工場の水源涵養エリアで地下水を育む力の大きい森を目指し03年から「天然水の森」と名付けた水源林保全活動を行っている。
このような従前からのサステナビリティ活動や近年の環境負荷軽減の取り組みが奏功している模様で、「サントリー天然水」では「一部のお客様があえて『サントリー天然水』を選んでいただくような行動変容への兆しも見えてきた」という。
特に10代・20代の若年層でこの傾向が顕著で増加していることから「サステナビリティに絡んでいる商品、あるいはサステナビリティの価値を持つ商品が将来的に選ばれる」との見方を示す。
「ウォーター・ポジティブ」のコミュニケーションは、今年6月から「新しい地図」の稲垣吾郎さん・草彅剛さん・香取慎吾さんを起用したCMを放映。12月12日には芦田愛菜さんを起用した新CMを放映開始した。
新コミュニケーションメッセージは“未来の水をいま、森からつくる”。
コミュニケーションの意図について、佐藤匡ブランド開発事業部課長は「これまでは、どちらかというと“ウォーター・ポジティブやっていきますよ”という宣言が中心だった。今後は、『ウォーター・ポジティブ』の内容を分かりやすく紐解いていく必要があると考え、SDGsネイティブ世代の芦田愛菜さんを起用し共感が得られるコミュニケーションを展開していく」と説明する。
商品を通じた啓発も強化していく。
「サントリー天然水」の2LPETと550mlPETのラベルデザインを変更して来春以降順次発売していく。
新デザインは「ウォーター・ポジティブ」に込めた想いをより分かりやすく伝えることを意図している。
「今年のコミュニケーションによるお客様の反応をみていると、情緒的側面を出しつつ『ウォーター・ポジティブ』を説明してくほうが刺さりそうなため、そのような形へ思い切って変更した」と述べる。
海外では、国内で培った知見を活用。既に2015年からベトナムを皮切りに日本を除く7カ国でサントリー次世代環境教育「水育(みずいく)」を展開。参加人数2022年末時点で累計約19万人に上る。
一部の国を除き同社傘下のグループ会社が企画運営に携わり水循環の仕組みや、各国の水事情に応じたプログラムを展開している。
小野社長は「今後も子どもたちと水について考え、また未来に水を引き継ぐため新たな海外拠点での展開を視野に入れて進めていきたい」と意欲をのぞかせる。
なお直近の動きでは、グループ会社のサントリー食品スペイン社が11月22日にスペインのトレド県ラヨス市と水源涵養に関する協定を締結。
2024年1月から、地域や各分野の専門家・研究者の協力を得ながら、同社トレド工場の水源であるグアハラス貯水池周辺とその上流域で植生回復による水質や生物多様性の向上を目的とした水源涵養活動を開始する。