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清酒「獺祭」 米国酒蔵、直接取引で挑む 「日本食以外の販路開拓へ」旭酒造

清酒「獺祭」醸造元の旭酒造は、9月下旬にニューヨーク郊外の米国酒蔵より新ブランド「DASSAI BLUE(獺祭ブルー)」の出荷を開始したが、販売方式は飲食店や酒販店との直接取引を採用、新市場の創造に挑んでいる。

本紙の取材に桜井一宏社長は「日本からの輸出は和食店向けが主力となっているが、『獺祭ブルー』は自分たちで洋食店など新たな販路も開拓していく。地道な活動になるが、ノウハウを蓄積してゼロから市場を生み出す足掛かりを築きたい。国内需要の活性化にもつなげられれば」など語った。

「DASSAI BLUE」、日本でお披露目も

日本の酒類をアメリカに輸出して販売する場合は卸売業者(ディストリビューター)を通すのが一般的。現地生産で始動した「獺祭ブルー」はこの方式をとらず、DASSAI USAのメンバーら数人で新たな市場開拓に乗り出した。近いうちにも5~10人の営業スタッフを増員する計画。

今回の方針は、日本での成功事例を想起させる。今でこそ「獺祭」は国内でメジャーな銘柄だが、特約店方式により少しずつファンを増やしてきた過去を持つ。

桜井社長は「ディストリビューターを介した方が早期に販売数量を拡大できるかもしれないが、中長期的な視点で成長を図っていくには、自分たちで試行錯誤しながら様々なノウハウを積んでいくことが重要と考えた」と狙いを話す。

「DASSAI BLUE(獺祭ブルー)」(旭酒造)
「DASSAI BLUE(獺祭ブルー)」(旭酒造)

初年度の出荷数量は約500石(90㎘)を想定。これは米国向け輸出量の約4分の1に相当する。品質に磨きをかけながらブランディングを推進し、これまで「獺祭」の取り扱いが少なかった洋食店ルートも積極的に開拓、今後約10年で最大7千石規模を目指す。

「獺祭ブルー」のラインアップは「タイプ50」「タイプ35」「タイプ23」の3品。「米国酒蔵での酒造りは夏頃から始まったばかりで発展途上」(桜井社長)との評価だが、新しい環境で高品質な純米大吟醸造りに挑戦し続けている。価格帯は日本から輸出した「獺祭」の現地価格を若干下回る水準。

当面は日本産の山田錦で仕込むが、来年1月頃から米国・アーカンソー州産の山田錦も使って製品化する方針だ。「いずれは米国産米100%が理想だが、時期は急がない。あくまで酒の品質を重視し、農家との連携も深めながら徐々に切り替えていく」。

なお24年春頃、数量限定で「獺祭ブルー」を日本でも販売する構想がある。「われわれは日本で育てていただいたからこそ海外で挑戦できている。1回限りかもしれないが、待ってくださっている方々に少しでもお届けできれば。話題喚起で国内の『獺祭』が活性化することも期待している」。

前期売上6%増、輸出減少もインバウンド好調

23年9月期の売上高は174億円、前年比6%増、数量は約6千100kl(約3万3千800石)。うち、輸出売上は68億円、5%減、数量は約2千500kl(約1万3千800石)だった。

輸出のマイナスには上位国の消費低迷が挙げられる。1番手の中国は景気減速で外食ルートが振るわず、2番手のアメリカは物価高と前年高水準の反動が影響した。ただし韓国や台湾は倍増と拡大。タイやインドネシアなどの東南アジア諸国も2ケタ増と伸びた。「コロナ禍が明けて人の往来が活発になった効果を感じている」(桜井社長)。

今後に関しては、「一部の輸出先はコロナ禍の3年間で現場を直接フォローしきれなかった歪が出ている。各国の課題を整理して品質管理を徹底するなどし、将来の成長に向けた足場を固め直したい」とする。

国内向けは、都市部の飲食店ルートが好調で、免税店などインバウンド消費の劇的な回復も寄与、トータルで2ケタ増収となった。

※1石は180L。

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