山本海苔店 海外展開へ体制強化 「海苔生産を守るため」

山本海苔店(東京都中央区、山本貴大社長)が海外展開に向けた体制強化を進めている。このほど、資本業務提携を結んでいた髙岡屋(東京都台東区、髙岡則夫社長)を子会社化し、製造拠点である佐賀工場でFSSC22000の認証を取得した。

山本海苔店は、嘉永2年(1849年)の創業以来、日本橋に本店を構える老舗海苔メーカー。「味附海苔の創案企業」として、中元・歳暮などギフト向け製品を主力に展開してきた。中元・歳暮市場の縮小が続く中、山本社長が専務に就任した7年ほど前から「脱中元・歳暮戦略」を掲げて土産市場に参入、販路拡大に努めている。

しかし土産市場もいずれ頭打ちになると判断し、海外への展開強化に踏み切った。

山本社長は「当社の経営理念である『よりおいしい海苔を、より多くのお客様に楽しんでいただく』の実現には、おいしい海苔を作る漁師の皆さまが最も大切。われわれは原料をできるだけ高く購入し、生産の継続に貢献したい。日本食の普及で海苔ニーズが高まる海外での拡販は、日本の海苔産業を守る方法の一つ。髙岡屋の力を借りながら取り組んでいく」と語る。

髙岡屋は、中国・アメリカ・メキシコ・ポーランドに拠点を構え、海外での売上が大きなシェアを占める海外販売の先駆的企業。両者は昨年7月に資本業務提携を締結し、販売網や製造拠点、ノウハウなどを共有、シナジーを追求してきた。大森水産などとともに一次加工会社SENKAIフーズを九州に設立し、国産海苔の供給安定化に貢献する取り組みも進めている。

14年に新設した佐賀工場では、翌15年にHACCPを取得し、今年1月には量販店との取引を念頭にJFS―B規格の適合証明書を取得した。今回、国際基準であるFSSC22000取得によって、海外向け取引の円滑化を図る。

同社には以前から「扱う海苔に一帖たりとも不良品があってはならない」という指針があり、佐賀工場以前に製造を担っていた秦野工場では03年、海苔業界でいち早くHACCPを取得するなど、品質には特に注意を払ってきた。

FSSC取得を中心的な立場で進めた清水正望仕訳技術室兼品質管理室課長は「HACCPなどで品質管理や衛生管理の下地ができていたため、短い準備期間で取得できた」と話した。