一連のコスト上昇を背景に値上げラッシュが続く近年の食品業界。スーパーやドラッグストアなどの店頭価格も順次切り替わっている。
ただし、悩ましいのは値上げすることで買い控えが起きるか否かであろう。小売業の現場でも人件費や光熱費の上昇が続き、利益を確保するにはコストの価格転嫁が不可避の情勢だが、客離れを招いては元も子もない。
そんな課題を解決する一助として、インテージは新たなサービス「プライスポテンシャル・サーチ」の提供を6月下旬から開始した。
事業開発本部DX部の佐藤健一部長、篠原正裕1グループグループリーダーが本紙の取材に応じ、「当社の『SRI+データ』と、小売業からご提供いただく『POSデータ』および『商品原価』を組み合わせることで、買い控えを起こさないギリギリの価格帯を特定できる。値上げしても販売数量が落ちなければ利益の最大化に繋げられる」と新サービスの特長をアピールする。
同社の「SRI+データ」は国内小売店パネルで最大のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る。スーパー、コンビニ、ドラッグストアなど全国約6千店舗から継続的に日々の販売情報を収集中。それらをもとに「POSデータ」の解析ノウハウを蓄積しており、このほど価格データ分析システムを独自開発した。
新サービスの肝は「価格弾力性の推定」(グラフ参照)だ。例えば原価80円の「牛乳」を120円で売っていたところ、130円でも販売数量が変わらないことをデータ上で確認できれば、失敗を恐れず“値上げ”に踏み込める。
また小売業が提供する商品原価」の情報と組み合わせ、利益の最大化をシミュレーションできることもポイント。商品によっては、意図的な“値下げ”で販売数量を拡大し、利益を増やす手法もあるという。
佐藤部長は「商品カテゴリーやブランド力によって結果に差が出てくる」としながらも、「最適な価格の検証はメーカーのNB(ナショナルブランド)、小売業のPB(プライベートブランド)とも対応可能。競合する商品の適正な価格差や購買者の許容価格なども分析できる」。
今後については「従来は消費税増税など必要に迫られての売価変更が多かったが、目下の厳しいコスト環境を乗り切るには、戦略的な値上げも必要になってくるとみている。そうした取り組みを本サービスで支援できれば」と展望する。
なおサービスの対象はスーパー、コンビニ、ドラッグストア等で店頭販売される消費財商品(食品・日用品・雑貨など)。