アサヒ飲料初  飲食の領域を超えた新事業 「父と虫とりして飲んだ」など「三ツ矢」の原体験から着想を得た体験プログラム販売

 アサヒ飲料は初の試みとして体験プログラムを販売するなど飲食の領域を超えた新規事業に乗り出す。

 新事業名は「三ツ矢青空たすき」。

 最初の取り組みとして、多くの生活者が持つ「三ツ矢サイダー」を通じた原風景・原体験から着想を得て開発された体験プログラムを販売する。

 体験プログラムは、現地体験・オンライン体験・動画視聴体験の3形態を用意し、年末までに約90回の企画を予定している。

 販売価格は企画によって異なり、1企画当たり3000円~1万円前後を予定。3形態トータルで年間4000人の参加を見込む。

 投資先行型のビジネスとなり、中長期を見据えて事業単独で収益化していく。体験プログラム以外の展開も視野に入れる。

 ターゲットは、サステナブルな暮らしを実践している人ではなく、サステナブルな暮らしへの関心があり、そのきっかけを求めている生活者。
 「三ツ矢サイダー」が長年かけて培われた親しみと信頼感を活用して、このようなサステナブル関心層に気軽に参加してもらえるように働きかけていく。

 これにより、自然環境への配慮や持続可能な暮らしを志向する社会に貢献していく。
 参加者に、日本の豊かな自然や人と人とのつながりを感じてもらい、自然や生産者に思いを馳せて野菜を購入するといったような消費行動の変容を促していく。

 実際、これを地で行くような体験をしたのが新規事業の旗振り役を務めるアサヒ飲料の宮本史帆さん。
 昨年の実証実験を経て、自身のモノの見方や感じ方に変化がみられたという。

 「例えば都会に生える雑草は、以前はただの雑草としてか思わなかったが、今は“こんなところから雑草が生えていて、なんて水に恵まれているんだろう”などと思うようになった。虫が怖いという感覚もだいぶ薄れてきた」と宮本さんは語る。

 同時に「三ツ矢」のブランド価値向上も見込む。

 「三ツ矢」のブランドパーパス(ブランドの社会的存在意義)は“透明な爽快感で、心の活動量を上げていく”で、体験によって得られる感動や共感などに寄り添う存在として露出していく。

 加えて「より多面的・立体的にサステナブルなブランドへと進化すべく新規事業を展開していく」。

 これらの取り組みによって「三ツ矢」のコアユーザーを強固にしていくとともに「三ツ矢」の休眠層を掘り起こし、さらには“飲まなくてもファン”を生み出していく。

 「昨年の実証実験でも“飲まなくてもファン”という語り部(後述)の方がいらっしゃった。この事業を通じて、飲料のユーザーだけでなくブランドに触れる一般生活者を巻き込み、ファンになって下さった皆様とともに新しいブランド価値を創っていく」と意欲をのぞかせる。

 体験プログラムの肝となるのが、体験の提供者となる語り部の存在。

 語り部とは、自然と共生し、人と人とのつながりを大切に活動している人を意味する。
 「単なる農業体験や自然体験とは一線を画し、語り部の方の熱い思いが参加者の心に深く刺さり、次の行動や意識が変わるきっかけになると私たちは信じている」という。

「三ツ矢青空たすき」の全体像 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「三ツ矢青空たすき」の全体像

 体験プログラムは、様々な角度から自然の好循環と持続可能な暮らしを楽しく伝える内容を予定。

 具体的には、森や海、畑などを舞台に“自然を楽しむ”“食を楽しむ”“つくるを楽しむ”の3つの切り口で、森づくりに参加する間伐体験や収穫したての野菜を使った料理体験などを提供していく。

 現地体験の最初の拠点は、豊かな自然資産と魅力ある人的資産を兼ね備えた場所として、福岡県糸島市を選定。
 糸島市で、皮むき間伐体験や、海底から湧き出る水で塩づくり体験などを予定している。

 オンライン体験では、企画によっては事前に体験キットが送られるなど、現地体験と遜色なく語り部の熱い思いが感じ取れる内容を予定している。

 その一例に、灰を使った手作り洗剤づくりや、糸島杉の自然素材粘土でつくる“へんてこモンスターづくり”などが挙げられる。

 一定期間内であれば、都合のよいタイミングで視聴できる動画視聴体験のコースも用意している。

 「三ツ矢サイダー」の提供は、現地体験・オンライン体験・動画視聴体験の3形態共通で行われる。

 アサヒ飲料が20代から70代を対象に実施した同社調査によると、田舎の原風景(山・川・緑など)と原体験(汗・笑顔・家族など)の中で「三ツ矢サイダー」を飲んだエピソードが多く、“自然の中で大切な人と味わう三ツ矢サイダー”が記憶に刻まれていることが判明したという。

 宮本さんは「(調査によって)ふるさとの自然や家族など大切な人と過ごした思い出が浮き彫りになった。“夏休みにお父さんと虫とりして汗だくになって休憩したときに飲んだ『三ツ矢サイダー』が格別においしかった”といったお声もあった」と語る。