調理現場に革新 油の交換が実質不要の「クールフライヤー」

コロナ禍やウクライナ危機などでこの3年高騰続きの食用油。食用油の相次ぐ値上げは、家庭はもとより中食、外食業界にとって死活問題になっている。そのなかで、揚げ物調理で使用した油の酸化を劇的に抑え、条件によっては油の交換も実質不要となるなど、コスト削減に寄与できるフライヤー製品「クールフライヤー」が業務筋で注目を集めている。すでに導入している一部の外食企業では、油はねや油煙の発生が抑えられるので厨房の油回りを清潔に保てるなど、揚げ物現場の環境改善や環境負荷低減についても好結果を得ているようだ。

同製品を開発したのはクールフライヤー(神奈川県横浜市、山田光二社長)。開発者の山田社長はかつて、食用油と水を同一油槽内に入れ、油槽の上部下部でそれぞれ分ける「油水積層水冷構造」を手掛けた。この方式でのフライヤーは業務用として流通しているが、「油の酸化抑制効果や安全上の問題、環境負荷軽減効果などの点で改善する余地があった」(山田社長)。

調理現場に革新 油の交換が実質不要の「クールフライヤー」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
油水積層構造と油水分離構造の比較(クールフライヤー)

「クールフライヤー」は油水分離水冷構造を採用することで、これらの課題を解消したもの。基本的構造は、フライヤーの油槽外部周辺に水冷式の冷却設備を設置し、油槽内にある独立した2系統のヒーターの温度調節により油温と対流を制御。油槽内に「下降対流」を発生させ、水分や固形物(揚げカスなど)を素早く油槽下部に沈殿させる。これにより油の酸価上昇を抑制し、純度を保ち劣化を防ぐ。

また、油槽周辺にある冷却水は、高温化した水が上部へ還流排出され、下部から新たに加水することで水温を一定に保つ。油槽外部周辺に冷却構造を設置しても熱効率は低下しない。「クールフライヤー」ではこれらの技術で4件の特許を取得している。

一般フライヤーとクールフライヤーの油の酸価比較 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
一般フライヤーとクールフライヤーの油の酸価比較

水分が素早く油槽下部に沈殿するため、作業中の油はねを抑制。オイルミストの原因となる油の飛散も抑制する。本体や周辺にも油分が付着することが極めて少ないため、清掃作業が短時間で済む。さらに、業務終了後タンクに回収された油は、翌日沈殿した揚げカスを回収した上で油をフライヤーに戻す。これら一連の作業も短時間で完了する。

同社が実施した試験では、「クールフライヤー」で1日10㎏の揚げ物調理を10日間行った後油槽内の油の酸価を計測したところ、0.69という驚異的な結果(日本食品分析センターによる)だった。通常のフライヤーでは、同様の作業を3~4日行えば酸価は2・5を超え、油の交換が必要となる。

21年8月に4台を導入した羽田市場食堂(池袋サンシャイン60通り店)では、これまで(23年3月末現在)で「油は継ぎ足しのみで廃油もない。油の劣化も極めて低い」としている。

山田社長は今後の事業展開について「現在、販売しているのは卓上用の小型サイズ。ニーズに対応し大型サイズも開発していく」としており、「クールフライヤー」から出た副産物についても「廃油は不純物が少ないため持続可能な航空燃料(SAF)の原料になり得る。揚げカスも炭化しないので飼料用途での循環利用にも適している」と期待を寄せている。

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