コカ・コーラシステムは、製造現場でAIによる節水とロス削減に挑む。
コカ・コーラ製品の原液を製造する日本コカ・コーラ守山工場(滋賀県守山市)に、米国のスタートアップ企業Laminar(ラミナー)社の先進技術を導入して実証実験を行う。
2026年に導入に向けた準備を行い、27年に導入・実証実験を予定している。
海外のコカ・コーラでは、25年9月にフランスの原液製造工場でラミナー社の技術を導入したパイロット試験を開始し10%程度の節水効果を確認した。
今後は、世界各地の工場での展開を予定する。日本国内では研究開発センターのテストラインやボトラー社の工場で実証実験を進めている。

その進捗について、25年11月25日、メディア向け説明会に登壇した日本コカ・コーラの文字(もんじ)哲也CPS Japan守山工場品質・労働安全・環境部長は「研究開発センターでも(フランスと)同様の成果が確認されている。ラミナー社の技術で環境負荷の低減と安定した品質が同時に実現できると思っている」と語る。
守山工場で最も水を使用するのは、タンクや配管を自動洗浄するCIP(Cleaning In Place)と称するプロセス。
「ボタン1つ押すとタンクと配管が全て綺麗に洗浄されるというシステムで、とても便利な反面、1回あたりに使用する水の量が結構多く、多いときだと数トンにも及ぶことがある」という。
世界のコカ・コーラシステムの中で、日本は比較的多くの品目の製造を手掛けていることから、小型のタンクを多く設備し、製品の切り替え頻度が高く洗浄回数が多い傾向にある。
この傾向から課題となっているのは、過剰洗浄が発生している点。最も汚れが落ちにくいものに合わせてCIPが一律に設定されていることから過剰洗浄が発生しているという。
「タンクや配管の中が、どれくらい汚れが落ちているか分からない中、一番汚れが落ちにくいものに合わせて洗浄している。一方、お茶などの汚れが落ちやすいものへのCIPには無駄があるのではないかと我々はずっと思っており、今回、ラミナー社の技術に着目した」と述べる。

CIPは、水に加えて化学薬品(洗浄液)とエネルギーも多く使用する。ラミナー社の技術で、洗浄時間を短縮し資源節約も図る。
ラミナー社のDavid Luチーフテクニカルオフィサー兼共同創業者は「守山工場で最悪のケースを想定した50分間のCIPを25分に短縮できる。そうすると、水の使用量と化学薬品の使用量も大幅に減らすことができる」と胸を張る。
ロスの少ないスムーズな製品の切り替えも可能にするという。
「通常、切り替えが完了した後、最初の7分程度は、製品を(洗浄液で流して)捨てなければならない。品質が良くてもドレイン(排出)する必要がある。我々の技術を使えば、これ以上、ドレインせず、最終製品にしてよいというタイミングが精緻に検知できる」と力を込める。

ラミナー社の技術は主に、特許取得済みのスペクトルセンサー(分光センサー)と専用のAIによる機械学習モデルで構成される。
分光センサーは工場の配管に容易に設置することができる。分光センサーが、流れている液体の固有の化学的性質を瞬時に判別。配管内部の様子をリアルタイムで確認してCIPサイクルの各工程を監視し、専用のAIによる機械学習モデルによって解析することで、洗浄のステップ、使用する水や洗浄液の量を動的に判断し、使用資源の削減と高い衛生状態の維持を両立することが可能となる。
「(液体に)光を当てるとバネやシーソーのように回転したり振動したりする。化学物質や分子はそれぞれ固有のフィンガープリント(分光指紋)を持っている。『コカ・コーラ』と『コカ・コーラ ゼロ』は、全く異なるスペクトルフィンガープリントを持っている。これを分析センサーが検知し、AIモデルがリアルタイムで最適な操作を指示する」と説明する。

海外のコカ・コーラシステムでは、北米、メキシコ、南米、欧州などでラミナー社の技術を導入。グローバル原液工場での平均削減効果は、水使用量の削減が44%、時間の削減が31%、洗浄液の削減が20%に上る。
「製品ロスも大幅に削減できている。これらの成果を世界に展開していくのを楽しみにしている。グローバルに規模も拡大している」と意欲をのぞかせる。
なお、守山工場は、水資源の責任ある管理と利用の国際認証であるAWS(Alliance for Water Stewardship)規格のコア認証を取得し、水の使用量削減などに取り組んでいる。
同認証の取得は、国内のコカ・コーラシステムでは、コカ・コーラボトラーズジャパンの白州工場(山梨県北杜市)に続く2拠点目となる。
