逆光線(コラム)「分からなさ」に耐える

「分からなさ」に耐える

 中国神話に登場する帝王・渾沌(こんとん)は、目・耳・鼻・口のない怪物だ。彼に手厚くもてなされた2人の帝王はそんな彼を不憫に思い、お礼に7つの穴を一つずつ空けてあげようとする。すると7日目に渾沌は死んでしまった。カオスな存在を無理に理解可能にしようとした結果だ。

▼「宇宙人による地球侵略」は昔からSFの定番。子どものころ、遠い星に住む宇宙人たちが虎視眈々と地球征服を企んでいるのでは…という漠然とした不安があった。

▼だが考えてみれば、地球人の間でさえ争いは絶えない。さらにどの利害集団も、考え方の違う多様な個人で構成されている。それなのにわれわれは、よく知らない人々を無個性な一枚岩の集団に単純化し、彼らの言動もすべて特定の意図に基づいていると感じてしまう。

▼理解の範囲を超えた対象にぶつかると、手近な方法や理解可能な構図で性急に判断を下す。AI時代の到来でそんな思考様式が加速する一方、「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念も注目されている。分からないものはとりあえず分からないまま、心にとどめておく。「分からなさ」に耐える力も必要ではないか。

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