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2025 / 12 / 31 水曜日
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加工食品調味料・カレー類カゴメ 創業地で見学会始動 モノづくりの原点「記念館」 「上野工場」醸熟ソース拠点

カゴメ 創業地で見学会始動 モノづくりの原点「記念館」 「上野工場」醸熟ソース拠点

 カゴメは10月から創業の地・愛知県東海市で、同社の歴史を伝える「カゴメ記念館」と、醸熟ソースの製造拠点で記念館に隣接する「上野工場」のファクトリーツアー(工場見学)を一般向けに開始した(完全予約制、無料)。記念館では創業から現在までの会社や商品の歩みを紹介。上野工場ではソースの製造ラインの見学に加え、香辛料の香りや特徴を紹介する展示や試食体験などを通じて、様々な角度からソースの新しい魅力を伝えている。

「記念館」技術革新の歴史を展示

 カゴメは1899年(明治32年)に愛知県東海市で創業。長期ビジョン「トマトの会社から、野菜の会社に。」を掲げ、社会課題である「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の3つを重点的に取り組んでいる。日本で食べられる緑黄色野菜の25%、野菜全体の約6%をカゴメが供給。「畑は第一工場」を商品づくりの基本とし、この考え方は海外の原料にも生かされている。世界のトマト加工会社では3位の加工能力をもっている。

 カゴメ記念館は、1974年に建設。展示されている品々は「近代化産業遺産」に認定されている。記念館1階入り口には創業者の蟹江一太郎氏の銅像と、企業理念である「感謝、自然、開かれた企業」の中の「感謝」の筆文字が来館者を迎える。2階は蟹江氏の歴史やカゴメの成り立ち、創業当時の資料や遺品など展示。創業当時は西洋野菜は栽培されていなかったが、蟹江氏は名古屋の農事試験場で栽培技術を学び、この地で西洋野菜づくりに挑戦。名古屋ホテルの料理長からトマトソースを分けてもらい、ソースづくりを開始。その後、洋風調味料に挑戦し、ウスターソースやケチャップを開発。英国生まれのウスターソースを日本人に合うよう工夫。酒屋から空き瓶を譲り受け、再利用して製品化した。やがてアメリカの食文化が日本に上陸し、ケチャップで国内有数のトマト加工メーカーとして成長。販売の中心もソースからケチャップやトマトジュースに移行。その後、トマトのリコピンやニンジンのベータカロテンの栄養素を研究。1985年(昭和60年)には人参をおいしく飲む技術を開発し、これが「野菜生活100」につながった。

トマトの品種改良の歴史を説明するスタッフ
トマトの品種改良の歴史を説明するスタッフ

 大正から昭和にかけて生産設備を拡充。国内初の自動トマト裏ごし機やトマトの芯抜き機などを導入。創業当時からトマトの契約栽培を採用。これによりトマトの安定供給が可能となり、ソースを中心に事業を大きく発展させた。食生活の変化に伴い、当初のケチャップ容器は細口瓶だったが、使い難いので広口、アルミチューブ入りに改良。世界で初めてケチャップにアルミチューブ容器を採用し、これを契機に消費が大きく伸びた。機械化されたアメリカ工場を見学した際に大きな衝撃を受けたと蟹江氏。この経験が革新運動につながり、トマト栽培方法や工場の機械化、新工場建設、ケチャップ容器の革新など数々の革新を進めた。記念館ではトマトの品種改良の歴史も紹介。世界には約1万種類のトマトの品種があるが、カゴメは7,500種類に種子を保有。ヘタがはずれて実が収穫できる加工用のジョイントレスやジュース専用の「凛々子」などが知られている。

「醸熟こそがおいしさの秘訣」

 上野工場は1919年(大正8年)に操業開始。全国6カ所工場のうち上野工場はソース専門工場。当時は地名が愛知県知多郡上野村だったため、上野工場と名付けられた。工場では香辛料の展示も行っており、香りの違いを体験できる。また、上野工場で製造している「ウスターソース」「中濃ソース」「とんかつソース」「こいくちソース」の4種類を試食し、味比べも楽しめる。地域ごとに異なるソース文化も紹介。見学通路には展示やモニターを設置し、楽しみながらソースの種類や製法、活用法等が学べる。香辛料の展示も行っており、香りの違いを体験でき、モニターでは地域ごとに異なるソース文化も紹介している。
上野工場はカゴメの歴史そのものであり、重要な生産拠点になっており、家庭用ペットボトル入りソース、ケチャップソースなどの汎用ボトルや業務用ソース、お弁当用ミニパックソースも製造している。

上野工場の製造商品
上野工場の製造商品

 ウスターソースは19世紀初めにイギリスのウスター州で生まれ、日本に伝わった。カゴメのソースづくりは1908年から始まり、1957年にはとんかつソース、80年の醸熟ソースを発売。パッケージも大きく変化した。

 壁面には「醸熟こそがカゴメソースのおいしさの秘訣」と表示。製造品目はウスター、とんかつ、中濃、濃い口(東海)の4品種。醸熟液は富士見工場で作られ、上野工場まで運ばれる。上野工場は調合から充填、箱詰め、出荷。

 現在は500ミリの中濃を充填し、パレットに入れて納品。主力ラインは2ライン。充填能力は1分間に200本。カメラ検査、キャップ、ラベラー、水滴除去、段ボールケーサーなどを経て出荷。ピザソース用の汎用ラインは1分間に約100本。お弁当用(5g、8g,10g容器)は1分間に600個生産。社員数は約100人、2024年の出荷実績は約150万箱。

充填能力は1分間に200本
充填能力は1分間に200本

第3四半期出荷量は4%増

 小林裕一工場長は「記念館はコロナの影響で一時中止していたが、5月から内装をリニューアルして見学を再開。工場見学も10月から新たに見学者通路を新設してソースづくりの見学を開始した。創業の地で歴史とモノづくりを見学できる施設ができたことは嬉しく思う」と語っている。

 また、マーケティング本部食品企画部「醸熟ソース」商品企画ブランド担当の服部恭教氏は、「カゴメソースは東海を中心に西日本の№1シェア。今年は昭和100年にあたるため、ソースとケチャップでつくるレトロな洋食メニューを店頭やSNSで発信。10~12月は子育て世代に向けてタレントの杉浦太陽さんを起用し、メニュー発信をしている。その結果、カゴメの購入率、購入容量は市場を上回り、レギュラーソースが食卓に出現する頻度も上昇。第3四半期(1~9月)決算の家庭用ソース全体の出荷量は前年同期比104%と好調。つけかけ用の少容量は前年比超え、300ミリサイズは横ばい、500ミリサイズは2桁増だった」。トマトケチャップとソースで作る名称を応募したところ「ケチャソー」が1位になり、26年度は洋食提案と掛け合わせた提案を実施。名古屋では「醸熟液」と香辛料を掛け合わせたクラフトコーラ、濃い口ソースで作る「台湾ミンチ焼きそば」を提案する。

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