味の素の中村茂雄社長は11月6日に開催した2026年3月中間期(25年4-9月)の業績発表において「売上高、事業利益はともに前年並みにとどまり、通期計画に対する進捗はやや遅れているものの、通期予想には着実な達成を目指すこと。さらなる中長期での成長とASV経営の進化に向けた取り組みでは、課題を抽出し、アクションの方向性を定め、具体的な戦略を練り上げた。2030ロードマップ達成に向けて活動を進化させ、中長期での持続的成長に向けイノベーションの創出に挑戦する」との方針を示した。
事業基盤を支える調味料・食品のうち、加工用うま味調味料は、上期はMSG(グルタミン酸ナトリウム)、核酸がともに減収減益だったが、これは「中国大手メーカーの増産や新規メーカーの参入によりマーケットが供給過多となり、一時的な落ち込みが原因」と指摘。
販売不振だった国内の家庭用冷凍食品についても、「顧客ニーズ把握の遅れにより、継続的にシェアが低下。主力品「ギョーザ」のシェアがNB大手競合以上にPBを含むその他メーカーに流出した」と分析。いずれも原因が明白なことから、今後は戦略等を見直すなど“打ち手”を講じながら、海外食品事業では着実な数量実現、日本食品事業はコロナ前レベルの事業利益率を回復させ、「2030ロードマップ」を着実に達成する方針だ。
中村氏は今年2月3日の社長就任後、対処すべき経営課題に対し4月以降の「60日プラン」を作成。経営課題の抽出とアクションの方向性を定め、このフレームをもとにして7~9月の役員研修(AGES、Ajinomoto Group Executive Seminar)において具体的な戦略とアクションを固め、ヘルスケア、フード&ウエルネス、ICT、グリーンの4つの重点成長領域を起点に議論した。
今後は3C(Continuity=継続する、Change=変える、Challenge=挑戦する)を切り口に議論を深める。
中村社長は「新事業を生み出すことが私のCEOとしての重要な使命」と認識する。新規事業への挑戦では持続的成長に向けた最重要課題とし、顧客ニーズを先読みし連携を強化することで、製品開発・市場投入のスピードと成功確率を向上させていく方針だ。
AGESでは4テーマに加え、経営資源最大化に向けてコーポレートブランドの強化、グローバル経営体質の強化、データドリブン経営の強化で議論。「例えばコーポレートブランドの強化では各国、各地域、各事業の状況を踏まえ、ブランド価値をどう高め、事業拡大につなげるかを議論。議論したテーマをアクションにつなげる」考えだ。
また、AGESのアウトプット等を材料に、今期中に取締役会で「長期のありたい姿」の議論を開始。「2030ロードマップ」とポスト2030を連動させながらそれぞれを磨き、中期ASV経営を進化させる方針だ。


