三菱食品は、コーチ・エィが主催するベストプラクティスアワードを受賞した。10月17日に都内で開かれた「COACH A sumit2025」で、三菱食品の山口研常務執行役員コーポレート担当兼CHRO兼CHO(健康増進担当)が人的資本経営の取り組みとコーチングプログラム導入の成果について講演した。
三菱食品では2022年にコーチングを経営の中核に据え、コーチ・エィのプログラムを導入。社員一人ひとりが自ら考え・発言・行動する組織風土づくりを目指し、次世代リーダーの開発を通じて組織変革を実現するDCD(Driving Corporate Dynamism)プロジェクトをスタート。本部長支社長層のリーダーがインターナルコーチとしてコーチングを学び体験し、社内の次世代リーダーへのコーチングの実践と対話を通じて組織風土の変革に取り組んでいる。プログラム導入の成果と、「MS Vision2030」で掲げる人的資本の強化について、山口氏は次のように語った。
三菱食品の最大の強みは人材。メーカーさま・小売業さまと日々のお取引を通じて信頼関係を築き、様々な課題解決に貢献する。人間力こそが価値創出の源泉である。また、当社は複数の企業が統合を重ね発展してきた歴史があり、多様な文化や価値観を尊重し、新たな力を生み出す企業風土が根付いている。
2024年にスタートした経営計画「MS Vision2030」では「食のビジネスを通じて持続可能な社会に貢献する」「サステナビリティ重点課題の同時解決」をパーパスに掲げ、デジタル活用、グローバル展開など新たな需要の獲得を柱に、次の100年も必要とされる企業を目指している。
この基盤となるのが人的資本の強化だ。環境が急激に変化し、予測困難な時代を迎えるなか、上位下達や年功序列の従来型制度では対応できないとの考えから、2020年に人事制度改革に着手。職責や役割を基準とした制度に転換し、挑戦する人が正当に評価される仕組みを整え、社員がありたい姿を描き、上司と対話しながら成長できる環境づくりを進めている。
「MS Vision2030」では社員のエンゲージメントスコア70%以上を目標に掲げている。社員が主体的に挑戦し、働きがいのある組織風土をいかに醸成するか。2022年にコーチ・エィのプログラムを導入し、エンゲージメントスコアは着実に向上している。
初年度はティーチングからコーチング型コミュニケーションへの転換が始まり、現場で対等な対話や問いかけ、傾聴が根付き、2年目には双方向・対話型のコミュニケーションが定着。組織全体で問いかけ・承認・フィードバックを意識した対話が広がり、若手の発言や挑戦機会が増えてきた。3年目はリーダーの育成が進み、メンター制度や任せる・見守る文化が浸透。現場レベルの業務改善やIT物流分野の改革も進み、組織の自立性が高まってきた。そして4年目となる今期は心理的安全性や信頼感の醸成がさらに進み、人材育成の活性化、新規ビジネスの具現化など組織の枠を超えた挑戦が現場から生まれている。
コーチングの浸透はコミュニケーションの変化にとどまらず、現在の主体性・自立性・挑戦意欲を引き出し、組織全体の持続的成長と新たな価値創出にもつながっている。経営層から現場まで対話を通じて信頼を築き、意思決定のスピードや質が上がり、イノベーションが生まれる。そして社員一人一人がキャリアを主体的に描き、会社のビジョンを自分事として捉えられるよう対話をさらに広げていきたい。
「明るく楽しく、元気よく、そして前向きに」を合言葉に、働きがいのある組織を作り、次の100年に向けて、皆さまとともに新たな未来を切り開いていく。


