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2025 / 11 / 11 火曜日
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農水畜産業食肉〈持続可能性追求するアイルランドの食料生産〉ビーフ編① 牧草育ちのおいしさ 世界のシェフから評価
2025台湾食品調達商談会 in Osaka by 台湾貿易センター

〈持続可能性追求するアイルランドの食料生産〉ビーフ編① 牧草育ちのおいしさ 世界のシェフから評価

欧州の西端に位置する島国・アイルランド。約500万の人口に対して2500万人分相当の食料を生産し、180か国以上に輸出する農業・水産物大国だ。なかでも日本への輸出量は年々増加している。将来にわたる持続的な供給を促進するため国を挙げて取り組むのが、食品サステナビリティープログラム「オリジン・グリーン」。食品に関わる生産者やメーカー、流通企業が加盟し、世界中の市場へ高品質な製品を安定供給している。生産現場を訪ねた。

高い品質基準のもとで、持続可能性に配慮した生産が行われているアイルランド産グラスフェッドビーフ。

「国内の農家数は13万5千戸。うち肉牛生産者は11万戸と大半を占める。国土の90%以上が農地で、緑豊かな牧草地に恵まれていることが背景にあります」。

アイルランドの食品、飲料、園芸などの販売促進を担う政府の機関、アイルランド政府食糧庁(ボード・ビア)牛肉部門マネージャーのマーク・ジーグ氏が説明する。

食品の生産・流通にかかわる事業者の大半は、ボード・ビアが主導する食品・飲料のサステナビリティープログラム「オリジン・グリーン」に加盟し、輸出の90%は認定企業によるものだ。第三者による測定・監査を通じて、世界最高水準の食の安全性と持続可能性の向上に取り組む、世界で唯一の国家的プログラムだ。

国内の農場は99%が家族経営。牛たちは年間220日以上を放牧環境で大切に育てられている。抗生物質・ホルモン剤不使用など、安全性への取り組みはその大前提。サステナビリティーや動物福祉への配慮も世界一厳しいとされるEU基準に基づいている。

国土の8割を占める牧草地では、区画ごとに牛を移動させていく放牧法「パドックシステム」を採用。牛が立ち入らず牧草が成長できる期間を確保しているため、1年を通して安定した牧草を餌として提供できる仕組みだ。

牧草肥育による高い栄養価とともに、おいしさで世界の一流シェフから評価を獲得。調査機関が22年に実施した食味テストでそれが裏付けられた。

日本の消費者300人以上を対象に行われたブラインドテイスティングでは、日本、アイルランド、豪州、米国の各産地の牛肉を試食。アイルランド産は市場シェアの高い他国を抑え、日本産に次ぐ2位を獲得した。

「日本産が1位なのは驚かないが、アイルランド産を2位以上に挙げた人は豪州産よりも多かった。これはとても意味のある結果だ」(ジーグ氏)。

赤身肉のおいしさと健康性、そしてサステナブルな生産方法が支持されるアイリッシュビーフ。日本への本格輸出開始からこの10年、高級レストランのシェフをはじめとしたプロユーザーからの支持を獲得しつつある。

(つづく)

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