「お~いお茶」の心臓部とも言える「伊藤園 静岡工場」(静岡県牧之原市、旧名:伊藤園静岡相良工場)の主要施設の1つ緑茶仕上加工工場では、日本全国の茶畑で摘まれて原料用に加工された荒茶が運ばれ、様々な「お~いお茶」製品に合わせて仕上げ茶に加工している。
仕上げ茶は、飲料用とリーフ用に大別される。飲料用は協力工場へ、リーフ用は伊藤園ティーファクトリーや、協力工場等へそれぞれ運ばれて最終製品化される。インスタント用は協力工場に運ばれる。
静岡工場の年間加工出荷量はドリンク用で約4500トン、リーフ用で約900トン。緑茶仕上加工は「伊藤園 神戸工場」(兵庫県神戸市)でも行われている。

静岡工場の位置づけについて、5月15日、清飲記者会の視察取材会に応じた高橋栄道静岡工場長は「『お~いお茶』のメイン工場であるとともに中央研究所・開発部・品質管理部を併設しており、ここから様々な技術を他の協力工場さんにも共有していく知と技術を共有する場所。新技術がどんどん生まれてくる可能性がある」と語る。
緑茶仕上加工工場では、一部の例外を除き、荒茶の投入・整形・火入れ・検茶・合組(ブレンド)・包装の工程を経て加工出荷される。
荒茶の投入工程には2024年5月に自動開梱機を導入。パレットに積まれた荒茶の包装を機械によって解体し荒茶をラインに投入している。
荷姿はアルミ蒸着袋入りの段ボールが7割を占め、そのほか大海(だいかい)と呼ばれるクラフト袋など3種類に大別される。

段ボールは1箱25~30キロ、場合によっては30キロを超えるものもある。
一日あたり30トン程度を加工することから、従業員の負担軽減や人手不足解消を目的にかねてから自動化を進めている。24年5月、半機械化から機械化へと移行。かつて3人を要していた人員を削減し現在は1人か2人で対応している。
課題は、段ボールの荷姿が約50種類と多岐にわたる点。これによりピンポイントで解体できないケースが生じることもあるという。さらなる効率化に向けて荷姿の統一が課題となる。

投入後、整形工程では、火入れに適さないケバや、茎、微粉が取り除かれ、火入れ工程に入る。取り除かれたケバなどは一部商品に活用されるなど100%利用されている
一般的に火入れには、合組してから火入れする先火(さきび)仕上げと、合組の前に大中小と大きさ別に火入れをしてから合組する後火(あとび)仕上げがあり、伊藤園では手間を惜しまずに後火仕上げを採用している。
2012年には、後火仕上げから新後火仕上げへと進化。大きさに加えて、一番茶・二番茶という茶期や品種の要素を取り入れて、それぞれに適した火入れを行っている。

静岡工場では緑茶用で4台、ほうじ茶用で2台の火入れ機が稼働。
そのうちの1台は24年に導入した小型のほうじ茶専用となる。24年、それまで外注していたほうじ茶の火入れを内製化。テスト生産を経て昨秋から本格生産している。
ほうじ茶の火入れはドラムを使用し短時間・高温で香りを立たせるやり方であるのに対し、緑茶ではマイクロ派で茶葉の中心の水分まで抜き香りを立たせてから焙煎。
マイクロ波乾燥機は高額な機械で、大量生産型の飲料用でマイクロ派乾燥機を採用しているのは「お~いお茶」以外皆無に等しいという。

火入れ室の室温は基本的に暑く、夏場になると40℃を超えることから、モニターを設置し別室でオペレーションできるようになっている。
合組は、飲料用では鮮度を重視してペンシル型のブレンダー(3トン)を使いの高速で行い、リーフ用では見た目を重視し多角形のブレンダー(3トン)を使い時間をかけて行う。
包装工程はほぼ自動化され、最初の設定とトラブル発生時のみに人手が入るようになっている。
