1.8 C
Tokyo
-0.1 C
Osaka
2026 / 02 / 10 火曜日
ログイン
English
飲料嗜好飲料UCC、水素焙煎コーヒーを量産化 環境にやさしくおいしさも向上「世界の食品産業でも珍しくユニークな事例」上島社長が自負

UCC、水素焙煎コーヒーを量産化 環境にやさしくおいしさも向上「世界の食品産業でも珍しくユニークな事例」上島社長が自負

 UCC上島珈琲は4月、レギュラーコーヒー製造の主力工場「UCC富士工場」にて世界で初めて水素焙煎コーヒーの量産を開始しカーボンニュートラルを推進するとともに、おいしさも向上させる。

 4月23日、富士工場で発表会に臨んだUCCジャパンの上島昌佐郎社長は「水素焙煎コーヒーはおいしく、しかも環境にいい。カーボンニュートラルに貢献する水素エネルギーを活用し、おいしさという食における本質的な付加価値を生み出すことができたのは、世界のコーヒー産業・食品産業でも珍しくユニークな事例だと自負している」と語る。

UCCジャパンの上島昌佐郎社長
UCCジャパンの上島昌佐郎社長

 同社が掲げるサステナビリティビジョンの1つ「2040年までにカーボンニュートラルの実現」に向けては「水素焙煎はそのための大きな第一歩」と力を込める。

 水素焙煎コーヒーとは、コーヒーを焙煎する際の熱源に、一般的なガスではなく水素を使用したコーヒーのこと。バーナーで水素を燃やして発生した熱風を焙煎釜に送ることで焙煎する。

 使用する水素は、官民・他業界の垣根を越えた連携とNEDOの採択を受けて開発されたP2Gシステムを使う。
 再生エネルギーをベースとした電気で水の電気分解を行ってつくられる「グリーン水素」であるため、実質的にCO2フリーの熱源となる。

 環境への配慮だけでなく、味わいにおいても優位性がある。水素は最小燃焼単位が小さいため、ガスでは出せない極弱火を出したり、ガスでは難しい緩やかな温度変化をつけたりが可能となっている。

 このことから、例えば“甘みを引き出させる温度帯”や“雑味を低減する温度帯”といった特定の温度帯で、長く焙煎することができ、豆の特性に応じてポテンシャルをより引き出すことを可能とする。

水素、都市ガス、窒素の配管。水素と都市ガスを切り替える際、安全のために窒素を注入し機械内部の水素を排出する
水素、都市ガス、窒素の配管。水素と都市ガスを切り替える際、安全のために窒素を注入し機械内部の水素を排出する

 量産には、同社の富士工場に導入された大型水素焙煎機「HydroMaster(ハイドロマスター)」を活用。

 「ハイドロマスター」は水素・都市ガスの両方の熱源に対応し、水素と都市ガスの混合での使用も可能とする。

 フル稼働させた場合、年間6000tの豆を焙煎することができる。
 これは、コーヒー1杯当たりに使用するコーヒー豆量が12gだとすると5億杯分に相当し、複数の大手チェーン店の需要をカバーできる量だという。

 量産化に伴い、4月23日には、水素のみを熱源とし焙煎した水素焙煎コーヒー7製品を新発売した。

「HydroMaster」の熱風発生装置
「HydroMaster」の熱風発生装置

 業務用のコーヒー豆とワンドリップ製品は定番品として、家庭用のコーヒー豆と飲料は数量限定品として展開する。

 コーヒーという消費者にとって身近な製品の発売によって、水素への理解が深まることも期待される。

 「水素で焙煎したコーヒーを通じて、一般の消費者の方に水素エネルギーを身近なものだと感じていただいて、少しでも水素エネルギーの普及に貢献したい」との考えを明らかにする。

 今後の水素焙煎コーヒーの課題には、焙煎や水素への理解、水素社会の達成に向けた連携、味わいのさらなる進化の3点を挙げる。

UCCジャパンの里見陵本部長
UCCジャパンの里見陵本部長

 UCCジャパンの里見陵執行役員サステナビリティ経営推進本部長は「コーヒー豆の焙煎がどういうものかイメージできない方や、水素というものがよくわからないという方も多い。丁寧なコミュニケーションで飲用を促し、水素のイメージや水素焙煎のイメージをつかんでいただきたい」と説明する。

 水素社会の達成に向けて、水素に注目している企業や地方自治体などと連携した活動を行い、水素そのものの認知や理解の拡大にも努める。

 “コーヒー屋”として、水素焙煎による味作りの研究もさらに進めていく。

 「今も自信のある商品を作れているが、もっと味わいをわかりやすく際立たせていきたい。水素焙煎だと明らかにおいしい、と言っていただければ、普及に弾みがかかると考えている」と意欲をのぞかせる。

UCC上島珈琲の伊藤佳世本部長
UCC上島珈琲の伊藤佳世本部長

 UCC上島珈琲の伊藤佳世DTC事業本部本部長も「お客様に価値をお伝えするときに、コーヒーのおいしさと環境への良さをセットでお伝えする。お客様が実感しやすい価値はおいしさのため、水素焙煎コーヒーだからこそできる味わいの体験を広げていく」と力を込める。

 将来的には海外展開を視野に入れる。実際に、今年1月にカリフォルニアで開催された「Hydrogen&Fuel Cell SEMINAR」では、アメリカを中心に海外の関係者から高い関心を集めたという。

 「まずは国内で販売をスタートさせたが、海外からの引き合いも出てきている。水素焙煎に対するお客様のニーズや理解は、日本より高いところもある。まずは輸出ベースになるが、ニーズには対応していきたい」と里見本部長は語る。

 海外での水素焙煎の可能性にも触れる。

 「焙煎豆は鮮度の問題もあり、海を渡ることは少ない商品。最終的には、消費国で水素焙煎をするのが一番の理想形となる」との青写真を描く。

「UCC富士工場」外観。新幹線からも見える「水素焙煎」の看板の裏側には、水素格納庫がある
「UCC富士工場」外観。新幹線からも見える「水素焙煎」の看板の裏側には、水素格納庫がある

関連記事

インタビュー特集

原点は休憩中に見上げたキウイ 全国で食材発掘、生産者と企業つなぐ サッポロビールの地域創生事業

 明治9年(1876年)、北海道で新たな産業を興すべく設立された「開拓使麦酒醸造所」をルーツとするサッポロビール。創業150周年を迎える今も、その“開拓”の精神は息づく。ビール会社としての枠にとらわれない発想力を武器に、事業領域拡張の最前線で奮闘する人物に迫った。一次産業を担う各地の生産者と企業のバイヤーをつなぎ、農林水産物の需要創出をサポートするサッポロビールの地域創生事業。その原点は、外食企業のコンサルティングを手がける部署で九州の拠点に配属されていた、一人の担当者のひらめきだった。

カキ養殖の展望を聞く〈前編〉 “殻付き”市場拡大 環境変化と効率化に対応 シーパジャパン・吉本剛宏社長

瀬戸内海で養殖カキが甚大な被害を受け、生鮮市場だけでなく加工メーカーや流通にも影響が及んでいる。こうした中、従来の養殖方法とは異なるシングルシード養殖法が注目されている。

繋げる、繋げる、繋げる たこ焼きコミュニケーション足掛かりに TKO・木本武宏さんが次のフェーズへ

STUDIO TAMUROはお笑いコンビ「TKO」木本武宏さんの活動拠点。木下さんの実妹・大岡真裕美さんが代表を務める「オフィスTAMURO」が運営し、トークライブや、YouTube番組作成スタジオとして利用してきた。昨年5月からは新たな活動として、毎月3日だけ営業する「たこ焼き店」がスタートした。

SST=“サミットの仕事が楽しい”へ 新たな競争軸を作る 服部哲也社長

――中期経営計画の進捗はいかがですか。― 服部 「良い×強い=最強」という言葉を掲げた中期経営計画「頂(イタダキ)2025」は、最終年度を1年延長して26年度までとした。

食品産業センター 荒川隆理事長に聞く 「食サス」設立でサステナ課題深掘り フードサプライチェーン全体の連携で

日本の食品産業は、国内外から調達された農畜水産物を原料として、健康で豊かな生活を送るために必要な加工食品を安定的に製造・供給する産業として発展してきた。