「世界一ワクワクするビール会社」を目指し、独自価値に磨きをかけるアサヒビール。来年に酒税改正、その翌年には「スーパードライ」発売40周年を控える今年も、コア事業のビールで新たな挑戦を行う。武器は「冷え」と「苦み」だ。
「ビールを活性化させることが、われわれの一丁目一番地」と語るのは松山一雄社長。2月21日の事業方針説明会で、イノベーションの連鎖を起こし市場拡大を目指す方針を説明した。
同社がこれまで主力市場としてきたのは、約2000万人とみられる「酒類をよく飲む」層。だが「たまに飲む」「飲まない」を合わせた7000万人に、新たな商機を見出す。
「飲まないと思われていた5000万人にも、きっかけがあれば飲むという方が2000万人もいる。ここは大きなチャンス。アサヒ社員の71%を占める『よく飲む』人の視線だけで市場を見ていても新しいポテンシャルにたどりつけない」。
「スーパードライ」(SD)では、今年も猛暑が予想される夏に向け「冷え」によるうまさの提案を強化する。
特製タンブラーやジョッキをキンキンに冷やし、ビールを4℃未満で提供する店を「スーパーコールド認定店」とする制度を新設。家庭向けにも、冷やすと色が変わるインキを用いたデザイン缶(数量限定)、冷たさを感じやすいアルミ製タンブラー付き商品などを発売する。
「視覚や触覚でも冷たさを感じられるようにした。日本中のSDを『スーパーコールド』にしていく元年としたい」(マーケティング本部長 梶浦瑞穂氏)。
09年から展開する、飲食店向け専用サーバーを用いた氷点下のSD「エクストラコールド」と併せ、機材なしでより手軽に「冷え」を楽しめる新施策により体験の裾野を広げる考えだ。
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さらに、同社スタンダードビールとしては7年ぶりとなる新ブランドも登場。4月15日発売の「ビタリスト」はホップによる爽快な苦みと、SDでも採用しているキレを生み出す酵母によるすっきりした後味が特徴だ。
「ビール好きの多くにとって、苦みが大切なポイント。SDがキレなら、こちらは苦み。苦みがあってキレもしっかりあるという、当社が得意とする領域を成し遂げた」(梶浦氏)。
調査では約8割の人が購入意向を示し、リピートの期待できる商品だという。アルコール分6%。350㎖缶の店頭想定価格は237円前後、500㎖缶は310円前後。
「SD」「マルエフ」含め3ブランド体制に。ビール酒税引き下げにともなう市場拡大をにらみ、選択の幅を広げる。
マーケティングでは従来とは異なるアプローチも強化。消費者が飲む場、買う場で“最後の一押し”をするべく、リテールマーケティングに特化した専門組織を新設。ID-POSなどのデータを活用した取り組みを強化するとともに、デジタル広告への投資をマス広告の50%に引き上げる。
RTDでは、昨年に話題を呼んだスライスレモン入り「未来のレモンサワー」の販売エリアを9月から全国に拡大する。
普及に力を入れるスマートドリンキングに関しては、社内資格認定制度「スマドリアンバサダー」を導入するほか、マーケティングに100億円を投資。現在400億円台のノンアル市場を、将来的に1000億円規模とすることを目指す。
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