デジタル活用、国内外で需要創造
三菱食品は、2030年度を最終年度とする新たな経営計画「MS Vision 2030」を策定した。
国内人口の加速度的な減少や地政学リスクの高まりなどサステナビリティ対応の重要性が高まる中で、従来のパーパスである「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献」に、「サステナビリティ重点課題の同時解決」を加え、デジタル活用・新たな需要の獲得・人的資本強化を軸に成長戦略を加速させる。最終30年度の経常利益目標は500億円(23年度比186億円増)。新たな取り組みでは日本産食品の輸出拡大など「規模感のある海外事業群を構築する」方針を示した。
9日の決算説明会で、京谷裕社長は「従来の積み上げ型の計画ではなく、2030年のありたい姿を起点にチャレンジングな目標を設定し、バックキャスト型の成長戦略を組み立てる方法に経営の在り方も改める」と新ビジョンの意義を説明した。
「MS Vision 2030」のサブタイトルには、~つぎの100年へ、食が創造する未来へ、たすきをつなぐ~を設定。2025年には前身の北洋商会創業から100周年を迎えることを念頭に、「未来に向けて当社の価値観を共有し、次の100年も持続可能な食のサプライチェーンが機能し続け、新たな価値を継続的に創造していくという当社グループの覚悟と思いを込めた」(京谷社長)。
具体的な取り組みでは「デジタル活用」「新たな需要の獲得」「人的資本強化(人財育成)」を成長戦略と位置づけ、データ基盤や物流ネットワークなど三菱食品グループの強み(経営資本)を生かし、環境・地域・健康・価値創造などサステナビリティ重点課題の同時解決を目指す。
デジタル活用ではDD(データ×デジタル)マーケティングによる新たなビジネスモデル構築と需要創造の取り組みを加速。業務効率化・生産性向上、SCM機能の強化による収益拡大を図る。2030年までに約850億円のデジタル関連投資を計画し、経常利益目標133億円(23年度比86億円増)を目指す。
新たな需要の獲得では、多様化する国内市場の生活者ニーズに対応した商品開発力を強化。人口減少による国内市場の縮小に対して、「マーケティング機能を駆使し、小売業の販売維持・拡大と生活者からのロイヤリティ強化に貢献する。またオリジナル商品の委託生産や輸入ブランド商品の生産を通じて、メーカーの工場稼働率アップや海外への輸出支援も行う」とした。
新たな取り組みでは、世界での日本食文化の需要の高まりに対応し、海外事業の展開を強化。ベトナムでの小売企業への出資をはじめ欧米・アジア市場への展開を広げ、「製造・卸・小売・外食の形態を問わず、食の領域で規模感のある海外事業群を構築する」。
この分野では、国内外で約200億円を投資し、2030年の経常利益75億円(同60億円増)を計画する。輸出ビジネス・海外事業は、経常利益ベースで約40億円の事業創出を目指す。
そのほか、社会環境価値分野の定量目標として、社員エンゲージメントスコア70%以上、FTSE・ESGスコア4・0以上、食品廃棄量50%以上、CO2排出量60%以上削減を掲げた。