コロナ明け後、初の春夏向け食品・飲料商戦が本番を迎える。3~4月の小売の棚替えに合わせて新製品やリニューアル品、販促計画などが出揃い、本番に挑む。原材料価格の上昇が落ち着き、一段も二段も上がった新価格がどう受け入れられるか。各業界が新たな局面を迎える中で、消費者選択の真価を問う。
健康、タイパなどキーワード
コロナが明け人流は回復したが昨年来の物価上昇は続いており、今年春夏の消費環境は決して明るくない。一層の賃金アップが実現すれば購買における価格への許容も広がるが、不透明感は拭えない。新年の業界アンケートでも、今年は先行き不安による生活防衛意識は根強く、節約モードが続くと食品界トップが回答。消費者行動は一段と慎重になる予測だ。
今年1~4月に値上げが予定されている食品は、インスタントコーヒーやオリーブオイル、レトルト食品、ゴマ製品、清涼飲料、ケチャップ、冷凍食品、輸入ウイスキーなど。記録的な値上げラッシュだった昨年同期と比べて極端に少ない。昨年の値上げで採算が改善したためか、販売数量の低下を懸念してか、要因はまちまち。値上げアイテムの絞り込みも特徴的。一方、PB製品や低価格品への購買意欲も高まっており、メーカーは難しいかじ取りを迫られている。
厳しい消費環境だが新製品の期待度は大きい。昨年は冷凍食品やプラントベースフード、発酵食品などの新製品が多かった。今年は特定カテゴリーに集中せず玉石混交状態。原材料高が続く中、新製品よりリニューアル品が多いのも特徴だ。
日本アクセスが行っている「新商品グランプリ2024春夏」には、今年も各社から加工食品、冷蔵食品、冷凍食品、アイスの69品の新製品がエントリー。各社新製品のポイントとして同社は「野菜・雑穀を積極的に摂取させる商品」「野菜の良さを活用した商品」「機能性食品」「栄養訴求」「リラックスタイムにぴったり」「混ぜるだけ」「袋のまま」「かけるだけ」「失敗なく」「普段の料理に+αで贅沢感」などを挙げる。今年も健康・栄養・機能性や時短(タイパ)、リラックスなどがキーワードになりそうだ。
健康・栄養・機能性製品は、コロナを経て健康課題が多様化。機能性表示食品や特保はさらに進化し、認知機能や睡眠、ストレス軽減、歩行能力、体温などエビデンスが多様化している。中でも睡眠やストレス軽減には、今年も各社が新製品を発売。食材としては「タンパク質」が焦点となっており、ヨーグルトやアイスクリーム、菓子、飲料、ゼリー、ラーメン、カレー、シリアルなどが登場する。
タイパでは日本アクセスは「タイパが浸透する一方で、時間を楽しめる、時間をかける楽しみも広がり、タイパや非タイパの使い分けに、トレンドに敏感な層、高収入な層、若年層が関心を持っている」と予測している。販売ターゲットも仕事や学業、趣味などに充てる時間を創出するため、手軽に食べられて満腹になりやすい高カロリー食品などZ世代特有の特徴が浮上。販売促進ではSNS強化のほか、一時、コロナでなくなった店頭試食・試飲が復活し、テレビCMや新聞広告などに資源を集中させる動きも出ている。