ミネラルウォーターに若年層から支持

 ミネラルウォーター市場は拡大の一途をたどり、近年の傾向として若年層の支持が広がり需要を押し上げていることが浮き彫りになった。

 「一部のお客様があえて『サントリー天然水』を選んでいただくような行動変容への兆しも見えてきた」と語るのは、2023年12月12日、発表会に臨んだサントリー食品インターナショナルの小野真紀子社長。
 この「一部のお客様」の大勢を占めるのが10代・20代の若年層。若年層獲得にはサントリーグループが2003年から「天然水の森」と名付けた活動で水資源を守り生物多様性の保全に取り組むなど従前のサステナビリティ活動や環境負荷軽減の取り組みが奏功している模様で、「サステナビリティに絡んでいる商品、あるいはサステナビリティの価値を持つ商品が将来的に選ばれる」との見方を示す。

 同社の佐藤匡ブランド開発事業部課長は「ウォーター・ポジティブ」のコミュニケーションを23年6月から展開したところ、「10代、20代の方たちが50代の方たちと比べて明らかにコミュニケーションに対する好意度が高かった。やはり学校でサステナブルを教わったSDGsネイティブ世代のため、水のサステナビリティ活動に共感して商品を選ぼうという兆しが見えてきている」と説明する。

 ミネラルウォーターは若年層の嗜好にも合致しているようだ。

 ファミリーマートの澤口裕樹商品本部加工食品・飲料部飲料・酒グループマネジャーも「NBのミネラルウォーターが伸びている。若年層は味がついていないものを好んでおり、“余計なものを摂りたくない”ニーズも見られる」と語る。

 ミネラルウォーターのトップブランド「サントリー天然水」は好調を継続、23年は過去最高だった22年を上回り過去最高の販売数量実績を更新した。

 「い・ろ・は・す」も22年12月から全国発売している新ボトルで若年層の心をつかみ好調に推移している。コカ・コーラボトラーズジャパン第3四半期累計(12月期)で「い・ろ・は・す」の販売数量は前年比16%増と大きな伸びを見せた。

 日本コカ・コーラは、無理のない自然体のサステナブル志向が若年層を中心に今後主流となるとの見立ての下、昨年5月に「い・ろ・は・す」のブランドテーマを14年ぶりに刷新。「ごくごく自然に未来を変える水」をテーマにマーケティング活動を展開し数量増にも貢献しているとみられる。

 アサヒ飲料の「おいしい水」もエコイメージで若年層を獲得している模様。「おいしい水」の1-11月販売数量は前年同期比13%増の1千748万ケースを記録した。

 12月5日取材に応じたアサヒ飲料の米女太一社長は「なかなか差別化できない水(ミネラルウォーター)をどう差別化するかということをずっとマーケティングで検討し、ようやくラベルレスやシンプルecoラベルで非常に商品としての特徴が出せるようになった」と語る。

 若年層の支持拡大やインバウンド需要の高まりでミネラルウォーター市場は拡大している。

 日本ミネラルウォーター協会によると、日本でのミネラルウォーター(天然水)の1人当たり年間消費量は右肩上がりで、2005年の14.4ℓから22年に37.7ℓに拡大。
 23年のミネラルウォーター市場については、伊藤園の推定によると前年比20%増の3千510億円。
 インテージが公表した「2023年、売れたものランキング」では22位に「ミネラルウォーター類」がランクイン。夏場の全国的な猛暑が追い風となった飲料市場のなかでも特に大きく伸長したカテゴリーとなった。