マカダミア 世界で供給拡大中 需給安定化進む 成長へ期待高まる日本市場 ゴールデン マカダミア社に聞く

日本ではこの10年以上にわたり、ナッツ市場の躍進が続いている。ただそうしたなかでも、人気ナッツのひとつであるマカダミアは伸び悩んできた。潜在的な需要は高いとみられる一方で、世界的に供給量の不足が続いたことで価格は高止まり。コスト面から使いづらい素材となっていた。だがここにきて主要な生産国の生産量が増大に転じており、今後は潤沢な供給が期待できるようになった。

ここ数年で世界最大産地としての座に躍り出たのが南アフリカだ。なかでも最大の生産量を誇るゴールデン マカダミア社。日本ではデルタインターナショナルが総代理店として販売を担う。ゴールデン マカダミア社は最先端の技術と手作業で殻割後の選別を行っている。また、オフシーズンでも手入れの行き届いた自社農園で、丁寧においしいナッツを作り上げている。同社セールスマネジャーのマシュー・ベイリー氏に話を聞いた。

南アフリカ 5年で生産量倍増見込む 品質とコスト競争力に強み

――貴社について教えてください。

マシュー 当社は南アフリカでもマカダミアの最大産地であるムプマランガ州ネルズポートに拠点を置き、生産者が100%出資する協同組合形式の企業。供給するマカダミアの全量が加盟生産者によるもので、世界最大産地である南アの生産量のうち30%を占める。世界最高水準の食品安全性やトレーサビリティを確保している。

――世界のマカダミア生産の現状について。

マシュー マカダミア産業は過去10年間で2倍以上へと急成長した。90年代から需要が伸び始め、それを追いかける形で各国とも生産を拡大。近年になって供給体制が整ってきた。今後も年平均11%の成長が予測されている。ただマカダミアは他のナッツに比べてまだ小規模で、ナッツ市場の1%のシェアしかない。27倍の規模を持つアーモンドと比べても、ポテンシャルは大きい。なかでも南アは5年間で2倍への拡大を見込んでおり、生産量2位のオーストラリアよりも高い伸び率が予測される。10年後には3倍に成長する見通しだ。(表下記事続く)

世界のマカダミア生産量 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
世界のマカダミア生産量

――近年の需給状況は。

マシュー コロナ禍の2年間は、経済状況の影響から需給バランスに問題が生じた。消費が落ち込んだ一方でコストは上昇し、パッカーとして消費者の需要をつかむのが難しい状況にあった。このため新物が出回り始める2月に、生産コストを下回る低い価格で中国が買い始めた。中国向けは殻付きが主力だが、このところむき身の需要も旺盛になってきている。コロナ後は需要が増えてきたことで、価格は回復してきている。ただ中国のバイヤーがオーストラリアの生産者から直接買い付けるようになり、取引量の実態が不透明となったことで生産計画にも影響が出ている。

――貴社の生産状況について。

マシュー ゴールデン マカダミアの工場は世界最大規模の国立公園の近くにあり、サステナビリティや自然環境保護にも強い情熱を持っている。農場では肥料や水の供給を管理する装置が土中に設置され、木に必要な分だけの灌漑を行う精密農業が行われている。土壌の健康状態にも常に気を配り、選定した枝をたい肥として農場に還元している。太陽光発電によって1/3の電力を賄っているほか、マカダミアの殻を燃料にすることにも挑戦している。これが実現すれば、工場で使用される電力の100%の自給自足が可能になる。

――日本市場の可能性についてどうみていますか。

マシュー 一人当たり消費量では、日本は世界5位。他ナッツ需要からみると更に潜在的需要のある市場であり、消費者はマカダミアをよくご存じで高く評価してくださっている。高品質の製品を一貫して供給することを方針とする当社にとって、品質への要求水準が高い日本は価値を認めてもらえる魅力的な市場だ。堅調な中国の殻付き需要を背景に高値が続いていたが、供給量の増大にともない価格も安定してきた。新たな商品開発へ機が熟してきており、たとえばマカダミアを原料としたダイスをはじめ、粉末やペーストなど、市場の新たな可能性を探りたい。

ナッツ類は他の国ではそのまま食べられることが多いが、日本では菓子をはじめさまざまな用途への応用が多いのが特徴。そこに大きなポテンシャルを感じている。世界的に供給量が多いアーモンドは、菓子や飲料などすでにさまざまな用途で使われている。マカダミアは、日本での需要は今のところ年間3千tほどにとどまっている。他のナッツに比べて供給も不足しており、価格の高騰が続いていたので、使いたくても使えない状況だった。今後は需給バランスが整い適正な価格になってくると考えられ、小売企業の間ではこれを機に一気に需要を喚起しようとの動きもみられる。

南アで多く栽培されているマカダミアの品種は、オーストラリアの品種に比べて油分が多くておいしいと言われることが多い。味にセンシティブな日本の消費者に、ぜひお試しいただきたいと考えている。

―――日本市場での拡大の目標などは。

マシュー これまで日本では、地理的な近さや関税の要因もあってオーストラリアが主な調達先だった。ただ今後はその構図も変わっていくと考えられる。とはいえ、日本市場でオーストラリアとすぐに逆転するとは思っていないが、お客様に良い製品をご提供することで、少しずつ需要拡大にお応えしていく事が目標だ。世界的にサプライチェーンが不安定化するなか、調達先の一つに加えてもらうことを目指したい。

日本のユーザーのオーストラリアへのロイヤリティは高く、調達先を変えるのに事務的な手間もかかることは理解している。すべてをすぐ南ア産に変えるというよりは、まずはリスクヘッジのために選択肢のひとつとして使っていただければと思う。品質に関してはオーストラリアと同等以上のものがご提供できるうえ、製造コストは圧倒的に低いことも大きな優位性につながっている。人件費が安いため人手をかけて選別できるし、なおかつレーザーソーターなど最先端の機械も導入できる。なかでも当社は最大の処理工場を持っているのが強み。トレーサビリティの観点からも有利だ。

距離や関税の関係から中国のバイヤーが直接買い付けやすいオーストラリア産の需給状況は、中国の需要に左右されやすい。その点でも南アは安定供給の体制が整っているのがメリットだといえる。

――マカデミアナッツ市場の将来性についてどうみていますか。

マシュー 若い世代の消費者は、自分自身だけでなく環境や全体の価値連鎖を考えてより良い製品を求めている。マカダミアは価格が安定してきていることから持続可能性も高まっており、そうしたポジショニングに非常に合致していると考える。ナッツ市場全体の1%にすぎないが、独自の強みを提供できるすばらしい素材になると考えている。健康的かつ贅沢なスナックで、すばらしい食の体験をご提供したい。日本のみなさまと、刺激的な製品開発を行えることに期待している。

――デルタインターナショナルとのパートナーシップについて。

デルタインターナショナルを訪れたゴールデン マカダミア(GM)社と南アフリカ共和国大使館のメンバー。左から大使館カウンセラー・リアン氏、GM社ヘンク氏、大使館公使アナリーズ氏、GM社マシュー氏、大使館・五十幡氏 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
デルタインターナショナルを訪れたゴールデン マカダミア(GM)社と南アフリカ共和国大使館のメンバー。左から大使館カウンセラー・リアン氏、GM社ヘンク氏、大使館公使アナリーズ氏、GM社マシュー氏、大使館・五十幡氏

マシュー ゴールデン マカダミアとデルタの協力は7年目に入った。この間に両社のパートナーシップはますます強固になっている。日本は非常に重要な市場であり、独占的パートナーであるデルタとともにこの市場に取り組むことは常にわくわくさせられる。デルタによるプロモーションも非常にすばらしいものだ。南アが世界の最大産地になった今は、安定供給性の観点からも良いタイミング。新たな開発にもチャレンジしたいと考えている。

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デルタインターナショナルでは、世界各地のナッツを集めた人気アイテム「ナッツ屋さんシリーズ」から、ゴールデン マカダミア社の原料を使用した「ナッツ屋さんのマカダミアミックス」「同 マカダミアナッツ」の2品を近日発売予定だ。