「売り手」だけ良し!?

「そうは問屋が卸さない」という言葉も最近は聞かなくなったが、今の食品流通業界ならば「それは小売が許さない」の方がしっくりくるか。大手小売を中心にPBシフトや値下げの動きが強まっている。消費者からは歓迎の声が多いが、そうそう手放しで喜べるものでもない。

▼原料価格をはじめ輸送費、燃料費、人件費などの高騰を背景に、この2年ほどでモノやサービスの価格は大きく上昇。ただ一方で、国民生活は疲労の度を増している。価格上昇に給与の引き上げが追いつかず、実質賃金は18か月連続マイナスという状況だ。

▼そこを突き、また価格競争の波が押し寄せてきた。消費者支援という錦の御旗を掲げて。以前、とあるPB商品の説明会で「価格はNBの約半分、粗利はNB以上です」と得意顔で聞かされた取材を思い出す。

▼どこかで誰かが割を食っている。消費者も実は分かっているが、自身の生活を守るのに精一杯。“売り手良し・買い手良し・世間良し”の「三方よし」も良いが、「売り手」の後ろに「作り手」と「運び手」がいることも忘れないで。