「金ちゃんヌードル」が発売50周年を迎えた。自社製粉の小麦麺と優しくて素朴な風味は昔と変わらず、地元中四国や東海・北陸地方、沖縄を中心にファンが多い。「特徴がないことが特徴」という同品は、一見地味だが、食べ続けて飽きないシンプルさと満足感がある。
製粉関連事業でスタートした同社が即席麺事業に参入した8年後、1973年6月にタテ型カップ製品「金ちゃんヌードル」が生まれた。その前後に発売した「金ちゃんラーメン」と「金ちゃんきつねうどん」とともに3本柱として売上を伸ばし、事業拡大に貢献してきた。ただ、すべてが順風満帆ではなく「当時は専務(現・田中信義会長)と私を含めて営業担当は4人だけ。営業がいないエリアにはなかなか商品を置いてもらえず、増員した93年頃まで続いた」と田中忠徳社長は苦労を振り返る。
世の中が移り変わり、同業他社で新製品が続々と発売されるなか、同社でも塩味、カレー味などのバリエーションを増やしていった。現在は醤油味の「金ちゃんヌードル」をはじめ、「しお」「カレー」「辛味噌」「天津麺風」「ど!にんにく」を揃える。シリーズ6品で同社即席麺事業売上の約半分を占める。
消費者に長年愛される理由は、「特徴がないこと」だ。50年経った今も、最初に発売した醤油味が売上を牽引する。味付けには、できるだけ天然の調味料を使うため、食べた後に底に黒い点が残ることもある。「消費者から、他の商品を食べると胃もたれするけど、金ちゃんには感じないと言ってもらっている」。身体に優しい商品設計も支持される要因だ。
容器は保温効果が高いプラスチック製のフタと、熱が伝わりにくい2重構造カップを採用する。(調理器具が揃わない)野外でも使いやすいと、特に農業・漁業関係者から重宝されてきた。
今年で27年目を迎えた消費者キャンペーンも人気を支える。毎年3~7月の各月500人、総勢2千500人に現金1万円をプレゼント。平均で15万強の応募を集める企画だ。「一度やったら続ける」という創業者の意思を引き継ぎ継続している。消費者に認知されて、恒例行事にしているファンも多い。
発売50周年記念として、今夏に「金ちゃんヌードル味焼そば」を発売した。突出した味わいがないだけに、いかにインパクトを作るかに苦戦した。優しい醤油味をベースにスパイシーさを加え、「ヌードル」と同じ具材をすべて投入したスペシャルバージョンだ。外観も「ヌードル」のレトロなデザインを踏襲。発売後の小売の引き合いが良く、また中四国最大の野外ロックフェス「モンスターバッシュ」に出店してPRしたところ、若い層にも好評だった。
近年は若年層をつかもうと、流行を取り入れたチャレンジ商品を女性中心の開発部が企画する。8月に発売した「ど!にんにく」は食べ応えのある太麺に、にんにくのパンチを利かせた塩タンメン。カップ容器は既存品のデザインを踏まえながら、文字やマークで遊び心のエッセンスを加えた。「若い人の感性を生かした商品を表舞台に引っ張り上げるために、どう販売戦略を立て市場を切り拓くか考えていきたい」と田中社長は話す。
伝統を守りつつ新たな風を採り入れ、「金ちゃんヌードル」の挑戦は続く。