岐阜大学と名古屋大学を運営する東海国立大学機構(松尾清一機構長、以下「機構」)はこのほど、全額出資子会社Tokai Innovation Institute(以下、「TII」)を10月2日付けで設立すると発表した。TIIは産学連携事業を強化・推進するとともに、研究開発成果を産業界に還元。早期に事業化につなげることでイノベーションを加速させる。
TIIは、産学連携による共同研究の実施主体となる。プロジェクトに応じて研究者と雇用契約を結び(クロス・アポイントメント)、企業から受ける資金を研究者の給与や大学の研究スペース・施設使用料などに充てる。研究者への報酬を手厚くすることでやりがいを高め、研究成果の社会実装への意識を高める狙いがある。
記者発表に挑んだ松尾機構長は、TII設立の背景について「2018年に名古屋大学が文部科学省より受託したオープンイノベーション(OI)機構の整備事業(未来社会創造機構OI推進室)を母体としている。社会はかつてないスピードで変化しており、TIIは大学内のルールや慣行に制限されない迅速で柔軟な意思決定を行う。プロジェクトマネジメントを主体的に実施し、機構内外のネットワークも活用しながらOI活動を加速させたい」と述べた。
TIIの社長には、未来社会創造機構OI推進室の初代室長・小池吉繁氏が就任。「過去5年間のOI推進室事業では、総計20億円の外部資金を獲得。大型の産学共同研究を通じ、社会イノベーション・研究活動の強化を実現してきた。TIIは3年後の売上高2億円・黒字化を目指し、機構全体の自主財源として10億円超の外部資金獲得に貢献したい」(小池社長)としている。
当初の研究活動は「モビリティ社会」「先進マテリアル・脱炭素」「ナノライフ」「食と農」を中心に展開する。TIIの執行役員に就任する寺野真明氏(OI推進室長兼務)は「中部・東海地区は全国1位の農産物が多い。岐阜大学には『食と農』の研究者も多く、ポテンャルの高い領域だ。機能性食品や食品ロス、再生可能農法などを軸に、TIIの産学連携事業の突破口になる」と見立てている。