豊かな水産物の源である北大西洋に取り囲まれた、ヨーロッパ最西端の島国アイルランド。国土を包む広大な海は多種多様な生命を育んでいる。
アイルランド産シーフードは毎年世界75か国以上に輸出され、昨年の輸出額は約813億円。このうち日本向けは27億円にのぼり、20年比では約7割増へと躍進している。
EUの一員であるアイルランドの水産業界は、近年国内外の市場で目覚ましい成長をみせる。EUの厳しい食品安全基準を満たすことを最優先に掲げ、漁獲と生産加工を行っている。最も生産性の高い漁場と地理的に近いことから、高品質な脂肪分と肉質を持つ遠洋魚の漁獲ができるのが大きなアドバンテージだ。
水産資源の長期的な持続可能性を担保するため、EU海域に毎年設定される魚種ごとの商業漁獲枠を順守。科学的根拠に基づく検証可能な環境保全計画や、天然魚介類の追跡可能性の実現へ努力を重ねる。
世界的に評価の高まるアイリッシュシーフード。とりわけ近年、日本市場で確固たる存在感を築いているのがサバとアジだ。またツブ貝、ラングスティーヌ(手長えび)、牡蠣、ムール貝、ブラウンクラブといったプレミアムな甲殻類も高級ホテル、レストランをはじめとする外食業界で着実に認知されつつある。世界初のオーガニック認証を得たアトランティックサーモンの主要サプライヤーとしても、サステナビリティやナチュラル志向のユーザーから注目を集めている。
さらに同国は、国内すべての産地でオーガニックムール貝の持続的養殖に成功した、世界でも数少ない生産国の一つでもある。大西洋側の複雑に入り組む海岸線に沿った入江で営まれるオーガニックムール貝養殖事業は、持続可能な漁業の証であるMSC認証も取得。ヨーロッパを中心とした高品質志向の小売・外食市場から、高い評価を獲得している。
水産加工業者はEUの高レベルな食品安全基準の順守に加え国を挙げて取り組む食品サステナビリティープログラム「オリジングリーン」に参加。世界中の市場へ新鮮なアイリッシュシーフードを安定供給している。
持続可能な農水産品の生産を目指し、アイルランドの食品企業の大半が参加するオリジングリーンは今年で10周年。この間にアイルランド産食品・飲料の輸出は順調に拡大し、現在の輸出額は130億ユーロ超。その成長と長期的な供給の保証に大きな役割を果たし続けている。
15年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)とオリジングリーンは多くの目標で共通していることから、アイルランド政府食糧庁(ボード・ビア)では国連との連携を強化。18年には国連グローバル・コンパクト(UNGC)に加盟し、持続可能性の課題に関するソリューションなどを国際間で共有。民間企業のSDGs達成を支援し、オリジングリーンの推進に関するボード・ビアの取り組みをさらに前進させる。