塩水港精糖 木村成克社長 “ユーモアな製品”開発に全力 砂糖市場の発展に尽くす

来年2月に創立120年を迎える精糖メーカー・塩水港精糖(以下、塩水港)。33年にわたり経営トップを務めた久野修慈氏(現会長)からバトンを引き継ぎ、6月29日付で木村成克氏が社長に就任した。木村社長は創業71年の含蜜糖メーカー・大東製糖(以下、大東)の社長を2005年から務め、「素焚糖」「からだにやさしいお砂糖」といった特色ある製品開発やベーカリーレストランの展開などユニークな取り組みで手腕を発揮。7月からの両社業務提携にあたり事業推進本部長を兼務し、シナジー創出に向けた陣頭指揮にあたっている。

「砂糖業界が大きな変革を迫られる中で、塩水港と大東の業務提携は極めて自然な流れだった」(木村社長)。両社はこれまで共同生産や販売面で緊密に連携。昨年11月には、大東が塩水港の筆頭株主となり業界の注目を集めた。木村社長は「大手精糖メーカーの経営統合が『規模の経済』を追求するものとすれば、われわれの狙いは商品の『中身』や『意味』を重視し、市場啓蒙を通じて砂糖のすそ野を広げること」と強調。「オリゴのおかげ」や「素焚糖」など独自商品の深掘りとともに、両社のノウハウを結集し「ユーモアな食品を提供し、お客様に夢を与える未来を創る」を打ち出している。

塩水港のバイオ関連商品「オリゴのおかげ」は、オリゴ糖市場の草創期から広告・CMを投入し市場啓蒙を展開。オリゴ糖のトップブランドへと成長した。「『おなかにやさしい会社』を正しく理解して継承していくことが私の役割」として、今後はビーツ事業の育成・強化に乗り出す。「ビーツは腸内環境を整えるいわば『腸活野菜』だ。製品にそうした“意味づけ”をすると、『オリゴのおかげ』とともに『おなかにやさしい会社』の中で整理され理解されやすい。ビーツを使ったドレッシングなど新たな用途を情報発信することで認知が高まり、市場のすそ野が広がる」と意欲をのぞかせる。

社長就任後の所信表明では「久野会長の経営スタイルを継承し、お客様に寄り添い、業界のために尽くしながら独創的な事業を展開する」と示し、今後中期事業計画の策定にも着手する。将来的な統合も視野に入れながら既存事業を再整備し、重点事業に注力する方針だ。両社の企業規模・文化の違いから、経営管理、営業、マーケティングなどアプローチ方法や得意分野は異なるが、「一体化・連携すべき部分は、良い方を選択しそれに合わせる形で進める。滑り出しは順調で、両社の伸びしろは大きい」と手応えを感じ始めている。

塩水港は、横浜工場(現、太平洋製糖)内に『さとうのふるさと館』(2004年に閉館)を設置し、砂糖市場発展のため啓蒙活動に力を注いだ。大東は、種子島でさとうきびの自社農園を展開。お酢やラム酒を開発するなど砂糖の可能性を追求している。「砂糖市場を育て、市場のために尽くしたいという思いは両社共通している。今後もわれわれは、お客様やユーザー・小売店さまに対して長期的な視点で寄り添い、環境保全や社会貢献を含めて砂糖市場の助けとなる企業でありたい」と力を込める。

来年は塩水港創立120年のほか、「パールエース」ブランド誕生から60年を数える。「オリゴのおかげ」発売30年も重なり、2024年は塩水港の歴史に残る節目の年となりそうだ。塩水港と大東の将来あるべき姿を見据え、木村社長の強力なリーダーシップへの期待が高まっている。