10月1日の酒税改正をにらみ、ビール大手の動きが活発化している。キリンビールが8月28日に明らかにした下期の政策も「ビール強化」を旗幟鮮明に打ち出した。
「酒税改正を機に、ビールの新しい景色を作り出す。これまでビールを飲んでいた人も飲んでいなかった人も、すべてのお客様にとってビールがより身近に感じられる世界の実現に向け、あらゆるシーンでより魅力的な提案を実施。さらにビールを身近に感じていただける取り組みを進める」(執行役員マーケティング部長・山田雄一氏)。
主力スタンダードビール「一番搾り」を中心とした強固なブランド体系の構築、クラフトビール市場をけん引する「スプリングバレー」による新たな成長エンジン育成を2本柱に掲げるキリン。酒税改正でビールへの注目が高まるタイミングに合わせ、これら両輪で消費者インサイトを捉えた提案を行う。
肩ひじ張らずに楽しめる飲みやすい味わいへのニーズが高まっているとみて、「キリン一番搾り やわらか仕立て(期間限定)」を10月10日に発売する。小麦麦芽を使用することで、やわらかなうまみとかろやかな後味を実現した。
「お客様には『無理し過ぎず自然体で過ごしたい』という価値観を基礎とした飲みやすい味わいのビールへの期待がある」(山田氏)とみて、すべてのユーザーが楽しめる飲みやすいおいしさでビールの裾野を広げる狙いだ。
また同社が60年にわたり岩手県遠野市で契約栽培を続けるホップを生のまま凍結して使用した「一番搾り とれたてホップ生ビール(期間限定)」が、発売20年目の今年も登場。日本産ホップのおいしさとともに、生産者の思いを伝える。
クラフトビール「スプリングバレー」からは、通年商品「JAPAN ALE〈香〉」を10月24日に発売。ビールの新たな魅力として「香り」を楽しみたいニーズがあるといい、自社開発の日本産ホップ「ムラカミセブン」を一部使用。柑橘のような爽やかな香りで、既存2品とは異なる味わいに仕上げた。
今年は「スプリングバレー」ブランド合計で前年比136・5%の販売数量を計画する。「7月までの累計は二ケタ増。下期の新商品ローンチもあり、決して到達不可能な数字ではない」と山田氏は自信を示す。
「『親が飲んでいたビールだからなじみがある』というこれまでの国産ビールの世界ではなく、ご自身で楽しめるものを探していくのが今の時代。今まで気づかなかったものへの気づきをご提供して楽しみを広げることで、ビール産業そのものが魅力的になる。手応えは徐々に感じている」。
まだクラフトビールを飲んだことのない人々にも、料飲店での食事とのペアリング提案などを通じて接点を作り、新しい楽しみ方への気づきを広げていく考えだ。