「サントリー生」に樽・瓶も 減税で追い風のビール 業務用との連動に重点

10月からの酒税引き下げを追い風に、ますます勢いが加速するとみられるビール。上期のビール類市場を牽引したサントリーでは、業務用との連動を強めることで顧客接点を拡大し、家庭用の缶についても一層の需要掘り起こしを進める。

「20年10月の酒税改正後、ビールカテゴリーはずっと伸びており、今回の改正でも同様の伸びを見込む。どこにアクセルを踏むかといえば、やはりビール。ブランドの世界観を伝えるキャンペーンでトライアルを獲得すること、業務用の強化で家庭用の需要拡大につなげること。この2点に注力する」。8月22日の会見でサントリービールカンパニーの多田寅(すすむ)マーケティング本部長が説明した。

サントリービールカンパニーの多田寅マーケティング本部長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
サントリービールカンパニーの多田寅マーケティング本部長

7月までの同社ビール類販売数量は前年同期比113%。市場推計の100%を大きく上回った。4月発売のビール新ブランド「サントリー生ビール」が上乗せとなったほか、既存2ブランドも堅調。ビールカテゴリーは134%と、市場の106%を引き離した。また推計88%とシュリンクが続く新ジャンル市場を横目に、同社の主力「金麦」が101%とプラス着地を果たしたことも大きい。

主力ビール「ザ・プレミアム・モルツ」は、特徴である“ごほうび感”を強調した金色の限定デザイン缶を10月に発売する。「同 香るエール」からも、世界観を表現したデザインの缶が登場。冬季限定のジャパニーズエールも投入し、トライアルの最大化を図る。

機能系ビール「パーフェクトサントリービール」(PSB)からは、日本初の糖質ゼロ黒ビール「同〈黒〉」を10月3日に限定発売。“醸造家泣かせ”だという黒ビールらしい飲みごたえと「糖質ゼロ」の両立を、麦芽・ホップの配合比率や醸造条件を工夫することで実現した。

好調な売れ行きから年間計画を上方修正した「サントリー生」。20~40代の比較的若いユーザーの比率が他ブランドと比べて高く、ビールの間口拡大にも寄与。若年層のトライアル強化とともに、テスト展開で高評価を得た業務用の樽と瓶を来春発売。既存ブランドとのカニバリを避けながら、料飲店への浸透を図る。「プレモル」「PSB」とともに店での飲用時品質を強化し、家庭での飲用拡大につなげる方針。

苦境の新ジャンル 「金麦」健闘続く

他方で、増税により苦戦が強まるとみられる新ジャンル。「金麦」の年間実績は、市場を10ポイントほど上回る93%を見込む。好調要因について多田氏は「『毎日飲むのにふさわしいブランド』として、店頭やCMを通してしっかりお客様の心に残るマーケティングができたため」と説明する。

10月以降の新ジャンル市場について「淘汰が進み、強いブランドに集約されるだろう」「26年にはビール類の酒税が一本化されるが、店頭での価格差は残る。『金麦』も『サントリー生』より少し安い価格で店頭に並ぶことになるのではないか」との見方とともに、効果的なマーケティングに取り組む考えを示した。