移動販売と聞くと、昭和生まれとしては豆腐や石焼き芋を想像する。最近ではキッチンカーや新たなビジネスモデルを築く「とくし丸」が記憶に新しい。
▼阪急百貨店が14日から開始した新サービスは、その名も「走るデパ地下 阪急スイーツ号」。デパ地下の人気商品を関西圏の介護施設や病院、マンション、オフィス、大学などで販売する。車両には洋菓子や和菓子30ブランド50品目を基本に、地方の物産展やバレンタインなど店舗の催事と連動した商品も限定で揃える。リアル店舗やECでは拾いきれない第3のマーケットを狙う。
▼近年、移動販売が再び注目されている。免許返納などで移動の足がなくなり、過疎化が進む地域に限らず買い物難民となる高齢者が増えているからだ。国や地方自治体の積極的な支援や大手チェーンの参入もあり、移動販売市場が伸長。コロナ禍で密を回避する生活様式も市場拡大の追い風になった。
▼接客の機械化や無人化が進み、対面せずとも物を買える便利な世の中になった一方で、人と人が顔を合わせるビジネスの成長が著しい。移動販売は古くて新しい、永続的な商いかもしれない。