有明海苔 公取委と漁協・漁連 主張譲らず膠着続く

日本最大の海苔産地である有明海で、乾海苔の取引環境を調査する公正取引委員会と地元漁協・漁連が互いの主張を譲らず、膠着状態が続いている。

昨年6月、公取委は独占禁止法に違反する疑いがあるとして、福岡有明海漁業協同組合連合会(福岡有明漁連)、佐賀県有明海漁業協同組合(佐賀有明漁協)、熊本県漁業協同組合連合会(熊本県漁連)に対して立入検査を実施。今年4月17日、公取委は福岡有明漁連に対して確約手続に係る通知を行った。

公取委が同法第19条第11項(排他条件付取引)または同12項(拘束条件付取引)の規定に違反する疑いがあるとしたのは以下の行為。

▽海苔の生産者に対し、漁協を通じた乾海苔の全量出荷を要請▽漁協に対し、生産者から集荷した乾海苔の全量出荷を要請▽指定商社に対し、入札以外で乾海苔を買付けしないように要請▽入札で売れ残った乾海苔を生産者に返さない――。

6月27日には、福岡有明漁連が申請した確約計画(排除措置計画)について、違反被疑行為を排除するために必要な措置が確実に実施されるものと認定したと発表。当該行為の違反は認定されず、福岡有明漁連への調査は終了した。

福岡有明漁連が申請した確約計画では「誓約書・覚書の廃止ほか違反被疑行為の取りやめ」「違反被疑行為を行わない旨、生産者に通知」「独禁法の遵守について行動指針の作成・周知や研修・監査を実施」「措置の履行状況を定期的に公取委へ報告」などが約束された。

公取委は佐賀有明漁協・熊本県漁連の調査を継続する考えだが、佐賀有明漁協は公取委の指摘について「すでに浜売り(共販以外での販売)は行われているし、それを咎めたこともない」とし、「売れ残りを返さない」という指摘には「売り先がなく不要だから生産者が引き取らない」と説明、熊本県漁連は「低品質な海苔の流通や価格の下落を防ぐ取り組みでもある」という立場を7月10日時点では取っている。

海苔の共販(入札)は、各地の漁協・漁連が主催者として、海苔の品質検査から等級認定、入札会まで行うもの。ある海苔商社幹部は「多数の生産者から一箇所に海苔が集められ、漁協・漁連によって品質が担保され、等級ごとに安心して取引できる。共販は必要な制度」と評価する。審査を担当した公取委事務総局第4審査局の岩下生知審査長も取材に対し「共販の役割は理解している。調査の目的は共販制度の否定ではなく、時代にあわせて改善すべき点の指摘」と話した。