一般社団法人日本乳業協会は、第109回「牛乳・乳製品から食と健康を考える会」を開催し、「世界で拡大を続けるプラントベースとプラントベースミルク」と題した講演を行った。委員からは「プラントベースが極端にブームになっていくことへの危うさを感じている」とする意見も上がるなど、牛乳との共存共生を見据えた活発な意見が交わされた。
講演に先立ち、本郷秀毅常務理事は「プラントベースフード(以下、PBF)市場の拡大は、生乳需給の観点から心配の声も上がっている。酪農乳業界の努力や成果に水を差す大きな脅威を感じられる一方、乳業メーカーも取り組んだり検討している事例があり、講演を通して疑問や課題点を確認してほしい」とあいさつした。
国内のPBF市場は、2015年から20年までに平均22.5%の成長率で伸長し、その背景には健康や環境への意識、エシカル志向の高まりなどがある。登壇した植物性料理研究家協会のPBFアドバイザー養成講座講師の浅倉亜美氏によれば、近年、ファッション誌や映画など食品以外からPBFに興味を持つ人が増え、植物性ミルクが選択肢の一つとなっている。スターバックスコーヒージャパンでは、22年から植物性ミルクへの変更にかかっていた追加料金を撤廃し、より身近に楽しめるようになったと言う。
植物性ミルクの人気が高まる一方で、酪農乳業界にとっては大きな懸念材料でもある。浅倉氏は、牛乳と植物性ミルクそれぞれの強みを理解したうえで、共生と共存を考えていくことが重要と語る。これを受けてメーカー代表者からも様々な意見が出た。
加工用原料の製造・販売でPBF市場に本格参入する方針を示した雪印メグミルクは、「PBFは置き換えるものではなく補完し合うもの。これまでマーガリンとバター、植物性ホイップと動物性ホイップは共存共生してきた。現状の製造・販売・流通のプロセスでPBFを活用できる要素は多くある」と期待感を示す。森永乳業は「発売30周年を迎える『マウントレーニア』をはじめ、多様なニーズに応え選択肢を増やす商品を拡充している。PBF市場の拡大が見込まれるが、牛乳乳製品の需要が置き換わることは当面考えにくい。引き続き酪農乳業と連携し、消費者へ健康を届けていく」との見方を示した。
よつ葉乳業は「今のところPBFに取り組む姿勢は全くないが、世界の人口が増えて消費が伸びていく場合、将来的に否定するものではない。現状は、国内の生乳販売に全力を注ぐ方針」などとした。
PBFの正しい情報発信の重要性についても意見が出た。江崎グリコ担当者は、「当社は『植物生まれのプッチンプリン』『アーモンド効果』などを販売しているが、いずれもPBFを発売したい考えからではない。プリンはアレルギーのお子さまに食べて欲しいし、アーモンドを日本に輸入した最初のメーカーとしてアーモンドをより広めたいとの思いから企画した。結果的にPBFになった」とし、「不二製油やカゴメなど競合とともに、規格基準作りに取り組んでいる。間違った表示や定義で商品が広まらないようにしたい。PBFは様々な年代で見たときに理解が追い付いていないことや、言葉自体知らない人も多い。コミュニケーションを通して正しいPBFの普及や多様化するニーズに対応したい」と語った。
なお「牛乳・乳製品から食と健康を考える会」は今回で休止し、年度内の再開を目指す。