味の素AGFは、スティックタイプの個包装インスタントコーヒー市場(スティックブラック市場)が活性化していることを受けて、「ちょっと贅沢な珈琲店」スティックブラックシリーズから東北・東海・瀬戸内(中国・四国)・九州4エリアの嗜好や特性に合わせたインスタントコーヒー4品を発売した。
エリア商品の開発にあたり「スティックブラックの登場によって特にコロナ禍を契機にインスタントコーヒーユーザーの特徴や構成が変わってきた点に着目した」と語るのは鈴木空太さん。
AGFは、2018年から「ちょっと贅沢な珈琲店 レギュラー・コーヒー」エリア向けシリーズを販売しており、特徴はその地域の嗜好や特性に合わせ開発している点である。現在北海道、東北、北関東、北陸信越、東海、関西、瀬戸内、九州の8地域向けに販売されている。
その後消費者調査をさらに行ったところ、インスタントコーヒーにおいてもエリア別のアプローチが有効であることが判明した。
これを受け、好評を博している「ちょっと贅沢な珈琲店 レギュラー・コーヒー」エリア向けシリーズに続き、インスタントコーヒーでも商品展開しさらなる拡充を目指す。
「ちょっと贅沢な珈琲店 レギュラー・コーヒー」でみられるエリア向けシリーズのポテンシャルについて、徳永理紗さんは「『スペシャル・ブレンド』などの定番商品を購入下さっているお客様が定番商品とともに買い回っていただいている。定番プラス1品ということで店頭の露出強化につながり、競争が厳しい中で2018年8月から発売している『九州まろやかブレンド』も定番プラス1品の売場を維持している」と説明する。
エリア商品がなぜ受け入れられているのか――。
その消費者インサイトについて、鈴木さんは「モカブレンドやキリマンジャロブレンドが産地起点の商品であるのに対し、エリア向け商品は逆のプロセスで、お客様の嗜好に合わせて我々が商品を開発するため、自分に合った商品と思っていただいていることが一番大きい」との見方を示す。
レギュラーコーヒーに続く拡充を狙うべく、インスタントコーヒーのエリア向け商品の味わいや開発プロセスはレギュラーコーヒーを踏襲した。
レギュラーコーヒーのエリア向け商品は、AGF独自の嗜好分析調査データを元に地域ごとの嗜好や特性に合わせて開発され、各エリアで働く営業部門の社員の声を色濃く反映させている。
一例を挙げると「九州まろやかブレンド」は、九州支社の社員の意見も取り入れ開発され、他のエリア向け商品でも同様のフローで実施された。
インスタンコーヒーのエリア向け商品も、同じく現場の声を重視。「実際商品を販売する営業部門のこだわりもしっかり反映し、研究所と試行錯誤して開発した商品」(鈴木さん)という。
スティックブラック市場が伸び盛りである点でも勝算を見込む。
スティックブラックは、袋タイプのインスタントコーヒーと比べて、一杯ずつ個包装されているため香りが逃げず、お湯を注ぐだけでいつでもフレッシュな味わいが楽しめるのが特徴。また持ち運びやすさや手軽さなど簡便性も利点となる。
この特徴が支持され、かねてから拡大傾向にあったところにコロナ禍で飲用が加速。リモートワークの合間や短い休憩時間のシーンでのユーザーを獲得し若年層の流入が顕著に見られるようになったという。
「カフェでコーヒーを飲まれている方やコンビニのコーヒーユーザーなど今までお家でコーヒーを飲まれていなかったお客様が入ってきている。ドリップコーヒーやミルク・砂糖入りのスティックコーヒーといった他カテゴリーからの流入もみられる」(德永さん)と説明する。
ドリップコーヒーからの流入の動きもあるため、売場では定番棚以外に、エリア商品3形態(レギュラーコーヒー粉・ドリップコーヒー・スティックブラック)を並べたエンド棚を提案して買い回りの促進と露出拡大を図っていく。
コミュニケーションは、東北・東海・瀬戸内(中国・四国)・九州の各エリアで地元メディアを活用するなどして、その地域の生活者の方へ伝える展開をしていく。
コーポレートスローガン「いつでも、ふぅ。AGF」に基づき、「ココロ」の健康の実現に貢献すべく、ドリップコーヒーとスティックブラックの個包装には飲用される方の心に寄り添うメッセージとイラストがデザインされている。
複数のパターンを用意し、その中にはワクワク感の演出として各エリアの名産品などをあしらったイラストとメッセージをかけ合わせたバージョンもランダムに詰め込まれている。その詳細は“手にしたときの楽しみ”としてAGFからはあえて発信していない。
AGFの調べによると、スティックブラック市場は22年、金額ベースで前年比2ケタ増と推定。多様化が進みさらなる市場拡大を見込む。
なおインスタントコーヒー市場に対してAGFは「ちょっと贅沢な珈琲店」でブラックコーヒー、「ブレンディ」で牛乳と合わせたカフェオレをそれぞれ提案していくことを基本スタンスとしている。