「チェンジブラインドネス」で検索すると、興味深い動画がいくつも見つかる。眺めていてもただの静止画に見えるが、最初と最後を比べると、ある部分が全く変わっているというもの。人間は変化に案外鈍感なのだと気づかされる。
▼思えば3年前の緊急事態宣言時、1日のコロナ感染者数は全国で500人ほど。それでも街から人が消えた。感染による死者数が過去最多水準で推移する現在、社会は急速に「ウィズコロナ」に舵を切る。だがこの間にさまざまな条件も変わり、あまり違和感は覚えない。自らの慣れに驚く。
▼政治に目を移せば、政府は敵基地攻撃能力の保有に従来方針を転換し、原発の新設方針も打ち出した。76年前に憲法で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めたとき、あるいは12年前の原発事故の直後、そんなことを想定した人はどれほどいただろう。
▼政権支持率が低空飛行を続けるなかでも、政治の大転換に対する反発の熱量は思いのほか低い。反面、熱狂的に支持する声も聞かれない。冷めた空気のもと、すべてが淡々と運ぶ。社会全体が「チェンジブラインドネス」(変化への盲目)に陥っているように思える。