キユーピー 前期は増収減益 「海外は規模拡大、国内は内容重視」髙宮社長

キユーピーは11日、22年11月期の決算説明会を開催し、髙宮満社長が23年度の取り組みの方向性について発表した。22年度の連結業績は、売上高4千303億400万円(前期比5.7%増)、営業利益254億3千300万円(9.1%減)、経常利益272億4千900万円(8.2%減)、当期純利益160億3千300万円(11.0%減)。

好調な海外事業や業務用の回復、価格改定効果が増収に寄与したものの、主原料の高騰やエネルギー・一般原資材の上昇による逆風を受けた。20~23年のコスト上昇影響は計442億円。23年単年では調味料の主原料で121億円、鶏卵相場の上昇で18億円、エネルギー・一般原資材で85億円の影響を想定している。

髙宮社長は「コスト上昇は大きなマイナス影響になると想定している。食油価格は一時のパニック相場からは脱却したものの、依然として高止まりが続く。鶏卵相場は飼料高騰の影響に加え、鳥インフルエンザの感染拡大が続き、相場が急騰している。収束の見通しは立っておらず、今後も予断を許さない」と厳しい現状を報告。さらに「主原料は先物購入しているため、23年度上期に価格高騰と為替影響がピークを迎えることになる。下期からは徐々に和らぐも、高騰が一巡するのは第4四半期以降になりそう。24年度以降は穏やかに外的環境の回復が進み経営にプラスになるだろう」と見通しを述べた。

価格改定効果については20~23年までで計217億円になる見通しで、「鳥インフルエンザの影響などが顕著になっており、このような背景を受け止めて再度の値上げも柔軟に検討する」とさらなる価格改定の可能性についても言及した。

今後の取り組みの具体策も説明。国内市販用は「価格対価値のバランス再構築」「健康価値領域の強化」「汎用化の推進」をテーマに展開する。「価格対価値のバランス」は、容量施策と業態対応。髙宮社長は昨秋発売した「深煎りごまドレッシング」(600㎖)を例に挙げ「市場に受け入れられ販売量増加に貢献している。今後も確実なプラスオンが見込める」とした。「健康価値領域の強化」については、市場ニーズに合致した新商品の上市を示唆。デザインや広告宣伝方法を工夫することで「商品の特徴を消費者に分かりやすく使えるよう努める」と話した。「汎用化の推進」は市場の活性化と用途拡大を意図したもので、生野菜サラダに限らず幅広く野菜を食べてもらえるような調味料商品やメニュー提案を強化する。

業務用では提案を強化してきたデリカ、ベーカリー、加工メーカーに加え、インバウンド回復に向け体制を整える。市場ニーズの変化に応じてオイル低減商品などのローコスト品も積極的に拡充する考えだ。また環境変化に対応すべく、外食や中食市場の課題である人手不足の対策となるようなオペレーションを簡便化した商品を拡大する。

髙宮社長は30年の経営数値目標を公表。海外収益力を現在の2倍に高め、国内収益性を1.5倍にし、ROE8.5%以上を達成する考えを示した。そのために成長ドライバーである海外への資源投下、サプライチェーンの生産性改革、マヨネーズの原材料成分でもある酢酸菌「GK-1」卵黄コリンといった機能性素材の研究開発など新規のビジネス展開を推進する。

髙宮社長は「海外は規模の拡大を進め、国内は規模を追うのではなく内容を変える。未来への取り組みは停滞させない。この取り組みはプラスオンの価値を生むと同時に、原料に依存する企業体質からの脱却にもつながる。創業100年を超える当社は過去にも様々な危機に遭遇し、乗り越えて事業を発展させてきた。今回の危機はかなり過酷だが、これを乗り越えることができれば、その先の未来は明るいと確信している」と意気込みをみせた。