有明産海苔が歴史的な不漁 佐賀・福岡で半減 上級品は価格高騰

海苔業界が有明海の歴史的な不漁で大変なことになっている。

全漁連によれば、12月31日時点の秋芽海苔の生産量は前年比で22%減。特に生産量日本一で品質にも定評がある佐賀有明産の秋芽は半減、佐賀に次ぐ福岡有明も40%以上の減産となり、仕入れ価格が跳ね上がっている。高騰する価格に頭を抱えながらも、まずは原料確保が最優先と仕入れに奔走する海苔商社も多い。冷凍網の張り込みが始まったが海の状況は変わらず、22年度産は50億枚を割るかもしれないとする観測も出ている。

全国生産量の約半分近くを占める佐賀、福岡県産は生産量が激減しているが、品質の低下も明らかで色落ちした海苔も多い。代替需要が発生した瀬戸内産は昨年まで7~8円の相場だった等級の海苔が14~15円に跳ね上がり、この時期しか採れない上級品は今買わないと来シーズンまで手当ができないため、昨年の14円台が今は18円になっている。

業務用や加工用が中心となる2月に入れば、相場はいくらか落ち着くと思われる。このゾーンは、今年25億枚強が入ってくる韓国産も使えるため、全体を見据えた新しい相場が立ってくるためだ。ただ有明産の回復は期待できないため、例年より高い相場観での推移は避けられない。

海苔の3分の1が消費される家庭用。昨年から今年にかけほとんどの加工食品が値上げに踏み切ったが、海苔は数少ない価格据え置き組。加工費や包装資材は上がっているが、原材料が上がっていないため流通との価格交渉には及び腰だった。今の状況から、今期値上げを行わなければ事業の継続は難しくなる。売価を上げるか、一帖10枚入りを7~8枚にするステルス値上げとするかはケースバイケースだろうが問題は値上げの時期。21年産から22年産に切り替わる4月までに価格交渉を終えておかなければ、売れば売るだけ損が出ることになる。

家庭用と同等かそれ以上に使われているのがコンビニのおにぎり用海苔。しかも、グレードの高い海苔が使われている。以前は有明産一辺倒だったが、最近は地産地消の浸透や、リスクヘッジも兼ねて瀬戸内産なども使われるようになった。コンビニに納入する海苔商社は必死に玉を集めているものの、従来通りの品質を維持することは難しい。量の確保が難しければ、海苔を巻かないチャーハンやチキンライス風おにぎりの品揃えが増えていくことだろう。将来の海苔離れが懸念される。

今週から、九州で冷凍網の入札が始まる。例年なら佐賀1県で2億枚ほどの共販枚数となるが、今年は佐賀、福岡、熊本の3県を合わせて、1億枚程度とみられている。海況は回復せず海苔が育たないため、張り込んだ冷凍網を引き上げた生産者も出てきた。22年産は、これまで経験したことのない厳しい漁期となる。